幻のアートフィルム『ドリーム・アイランド』、蘇生へ──ヴィム・ヴェンダース出演・ナレーション作、デジタルリマスター化プロジェクトが佳境に

ヴィム・ヴェンダースが出演・ナレーションを務めた未公開映画『ドリーム・アイランド ― ヴィム・ヴェンダースの失われた夢』(1991年制作)が、30年以上の時を経て、いま再び命を吹き込まれようとしている。幻のアートフィルムを世界へと届けるべく、現在クラウドファンディングが実施中であり、その終了が間近に迫っている(5月15日23:59締切)。

『夢の涯てまでも』から生まれた“夢のシークエンス”

『ドリーム・アイランド』は、ヴェンダースが「一番好きな作品」と語った『夢の涯てまでも』(1991)の制作過程で生まれた“夢のシークエンス”を起点に、東京を舞台に新たに紡がれたアートフィルムである。『夢の涯てまでも』で未使用となった約100分間の映像を再構成し、自身が12歳のときに撮影した8mmフィルムや、当時最先端メディアによる“エレクトロニク・ペインティング”も挿入。まさにヴェンダースの夢の結晶とも呼べる作品だ。

しかし、このフィルムは劇場未公開のまま、1993年発売のレーザーディスク特典にわずかに収録されただけで、人々の記憶の奥底に眠り続けていた。

きっかけは一通のメールから

再発見のきっかけは2020年1月、ヴェンダースがアソシエイト・プロデューサーの御影雅良に宛てた一本のメールである。「私はもうこの作品を持っていない」と語るヴェンダースに対し、御影は唯一残っていたVHSを探し出し送付。その後、ある女性がこの“夢”をさらに動かす。

彼女の名は仲田早織。本作の撮影監督である故・仲田能也の娘である。『PERFECT DAYS』を観て父との記憶と『ドリーム・アイランド』が蘇り、居ても立ってもいられず、御影が登壇する上映イベントを突撃訪問。それを機に、【『ドリーム・アイランド』デジタルリマスター製作委員会】が発足する。

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失われたフィルムを辿って ── そして、世界へ

プロジェクトは紆余曲折を経て、天王洲の倉庫にてHDテープや16mmフィルムなど計34本の映像素材を発見。フィルムの保存状態は良好だったが、いずれもデジタイズされておらず、このままでは再生も編集も不可能な状況であった。そこで現在、クラウドファンディングを通じて復元費用を募っているのである。

文化人類学者・今福龍太氏も「このフィルムが現実に蘇ること、それこそ私たちのもう一つの奇蹟」とエールを寄せ、プロジェクトに賛同。ティザービジュアルには、エレクトロニク・ペインティングの一部や、ベンチに寝そべる若き日のヴェンダースの姿が登場し、フィルムの持つ詩的な世界観を物語っている。

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クラウドファンディングは5月15日まで

クラウドファンディングが成功すれば、リマスター映像の上映に加え、制作過程を追うドキュメンタリーの制作、そして海外映画祭への出品も予定されている。「夢」をキーワードに、ヴェンダースが見つめた90年代初頭の東京。その詩的で実験的な視線が、いま再び私たちに問いかけている。

「あなたにとって夢とは何ですか?」


▶︎クラウドファンディングページ
https://motion-gallery.net/projects/DreamIsland

▶︎公式Instagram
https://www.instagram.com/dreamisland1991/

▶︎予告映像
https://www.youtube.com/@dreamisland1991

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