
メルボルンからロンドンへ。炎の中から生まれた声が、今度はグルーヴの深みへと潜っていく。2024年のデビューアルバム『From the Fire』で世界のジャズシーンに衝撃を与えたオードリー・ポウンが、2026年4月17日、新曲「Broken Record」をBBEミュージックよりリリースする。これは単なる新作シングルではない。彼女の次章への、宣戦布告だ。
ディラのスウィングが、トランペットの魂に火をつけた
BBEとジェイ・ディラの歴史は深く絡み合っている。そのレーベルと契約を交わしたとき、ポウンは自然とディラの初期作品へと引き寄せられた。「ディラのビートのスウィングが、僕みたいなジャズ好きにどんな感覚を呼び起こすか——この曲を書き始めたとき、そのフィーリングが頭から離れなかった」と彼女は語る。
「Broken Record」はその体験の結晶だ。ヒップホップのビートとジャズのフィーリングが溶け合い、ポウン自身が奏でるウーリッツァーの催眠的なモチーフが全体を支配する。ドラムのジョナサン・バーバーとベースのデヴィッド・ジニャードが紡ぐリズムは有機的に呼吸し、曲全体がひとつの生き物のようにうごめく。ジャズ、ヒップホップ、R&B、そしてアヴァンギャルドの断片——それらがポウンの手の中で、見事なひとつの塊として結晶している。
アルコールという名の、親しい敵
この曲が扱うテーマは、決して軽くない。「Broken Record」の歌詞は、ポウン自身のアルコールとの個人的で循環的な、ときに毒を含んだ関係を正直に描いている。ツアーミュージシャンにとって飲酒はしばしばストレスへの対処法であり、職業病のようなものでもある——その現実を、彼女は包み隠さず曲の中心に据えた。
曲の中盤、トランペットが静かに入ってくる瞬間が訪れる。それはまるで、言葉では届かなかった場所へ音が踏み込んでいくような感覚だ。そこから楽曲は密度を増し、ハーモニーの複雑な層が積み重なりながら、予想外のコーダへと向かって疾走する。中毒の螺旋を抜けた先にある、一瞬の解放——それをトランペットの音色が静かに体現している。
ロンドンという新天地で、花開くマルチ奏者の才能
2024年にメルボルンからロンドンへ移住して以来、ポウンはこの街のジャズシーンに急速に根を張ってきた。ロニー・スコッツ、ジャズ・カフェ、ブリック・レーン・ジャズ・フェスティバル、そしてニューヨークのパブリック・レコーズでのヘッドライン公演を経て、彼女の名は演奏家としても、バンドリーダーとしても確固たるものになりつつある。ジェイミー・カラム、ジャイルス・ピーターソン、BBC、DownBeat誌からの支持、ARIAアワードやオーストラリアン・ミュージック・プライズへのノミネートがその評価を裏付けている。
6月11日にはロイヤル・アルバート・ホールのエルガー・ルームでの特別公演も控えており、2026年9月にリリース予定のセカンドアルバム『Bodies of Water』への期待はさらに高まるばかりだ。
針が同じ溝を繰り返しなぞるレコードのように、人は同じ場所に戻り続ける。しかしその繰り返しの中にこそ、音楽は宿る。オードリー・ポウンはその循環を、美しい音楽へと昇華してみせた。
Audrey Powne
配信シングル:「Broken Record」
フォーマット:デジタル配信
発売日:2026年4月17日
Genre: Jazz
Sub-Genre: Soul Jazz
カタログ番号: BBE829SDG
