砂漠とレイブが交錯する禁断のロードムービー ── 『シラート』、音と幻覚の果てに辿り着く“道”

本年度アカデミー賞音響賞&国際長編映画賞にWノミネート、カンヌ国際映画祭で4冠を獲得し各国の賞レースを席巻する衝撃作『シラート』が、6月5日(金)より日本公開される。製作をペドロ・アルモドバル、監督・脚本をオリベル・ラシェが手がける本作は、砂漠のレイブカルチャーとロードムービーの緊張感を融合させた、前代未聞の映画体験だ。

爆音と沈黙が支配する、砂漠のレイブ・オデッセイ

物語は、砂漠のレイブパーティに参加したまま失踪した娘を探す父ルイスと息子エステバンの旅から始まる。モロッコの山岳地帯から砂漠の奥深くへと車を走らせた二人が辿り着くのは、現実と幻覚の境界が溶け合うカオスな野外レイブ。耳をつんざく重低音、赤い光に染まる群衆、そして沈黙を守り続ける父の背中。だが娘の姿はすでにそこにはなく、二人は次の会場へと向かうレイバーたちを追い、さらに深い“道”へと踏み込んでいく。

タイトルが示すのは、天国と地獄のあいだに架かる橋

原題『Sirāt』はアラビア語で「道」を意味し、宗教的文脈では審判の日に天国と地獄の上に架けられる“細い橋”を象徴する言葉だ。本作ではその概念が、砂漠という極限空間とレイブという陶酔の場を結びつけるメタファーとして機能する。進むほどに選択肢が削ぎ落とされていく旅路は、観る者に倫理と欲望の境界線を問いかける。

音響が物語を駆動させる“体験型シネマ”

アカデミー賞ノミネートを果たした音響設計は、本作の最大の武器だ。巨大スピーカーが砂漠に置かれた奇妙な光景から始まり、暴走するキャンピングカー、レーザーライトの乱舞、そして地鳴りのようなダンスミュージックが物語を推進していく。映像と音が相互に侵食し合う構造は、観客を単なる鑑賞者ではなく“参加者”へと変えてしまう。

巨匠たちが絶賛する、規格外の映画的興奮

映画監督のギレルモ・デル・トロは「巨大な宇宙のメトロノームのようだ」と称し、ポール・トーマス・アンダーソンも「映画館で体験すべき真の映画」と賛辞を送る。ゲームクリエイターの小島秀夫が“グルーブな恐怖の報酬MADMAX”と評したように、本作はロードムービー、サスペンス、そしてレイブ映画の文脈を大胆に横断する異形の一作だ。

砂漠映画の概念を更新するビジュアルと音楽

荒々しくも美しいビジュアルは、サハラやナミビアを想起させる広大なロケーションと、現代的なレイブカルチャーの光を衝突させることで、未体験の映像言語を生み出す。音楽を担当するのはカンディング・レイ。ダンスミュージックの鼓動が物語の緊張を増幅させ、観客の感覚を容赦なく揺さぶる。

予測不能の展開が導く、衝撃の“その先”

東京国際映画祭での特別上映ではチケットが即完売し、ヨーロッパ各国でも大ヒットを記録。観客と批評家の双方から「こんな映画は観たことがない」と熱狂的な支持を集めている。父と息子が辿り着く“道”の果てに何が待つのか ── その結末は、決して口外できない衝撃としてスクリーンに刻まれる。

『シラート』は、レイブの陶酔と家族の喪失、そして極限状況における人間の選択を交錯させた、極めて現代的な寓話である。音と光に導かれながら、私たちはやがて自らの内側にある“細い橋”を渡ることになるのかもしれない。


6/5(⾦)新宿ピカデリー、ヒューマントラスト有楽町、Bunkamuraル・シネマ 渋⾕宮下ほかにてロードショー


監督:オリベル・ラシェ『ファイアー・ウィル・カム』 
製作総指揮:エステル・ガルシア 製作:ペドロ・アルモドバル 脚本:オリベル・ラシェ、サンティアゴ・フィジョル
撮影監督:マウロ・エルセ 編集:クリストバル・フェルナンデス 美術:ライア・アテカ 
音楽:カンディング・レイ(デヴィッド・ルテリエ)
出演:セルジ・ロペス『パンズ・ラビリンス』、ブルーノ・ヌニェス・アルホナ、ブルーノ・ヌニェス・アホナほか
2025年/スペイン・フランス合作/スペイン語・フランス語・英語・アラビア語/115分/ビスタ/カラー/5.1ch/PG-12/日本語字幕: 杉田洋子 / 原題:Sirāt / 後援:セルバンテス文化センター / 配給:トランスフォーマー
© 2025 LOS DESERTORES FILMS, A.I.E., TELEFÓNICA
AUDIOVISUAL DIGITAL, S.L.U.,FILMES DA ERMIDA, S.L., EL DESEO DA, S.L.U., URI FILMS, S.L.,4A4 PRODUCTIONS

■ストーリー
砂漠で行われるレイブパーティに参加したまま失踪した娘を探すため、父ルイスと息子エステバンは、モロッコの山岳地帯から砂漠の奥深くへと車を走らせる。行き着いたのは、現実と幻覚が混濁するような野外レイブのカオス。耳をつんざく重低音、赤い照明の海、沈黙を貫く父親の背中。だがそこにはすでに娘の姿はなく、父と息子は、レイブの参加者グループを追って、娘が向かったと思われる次のレイブ会場を目指すことになるが……。

公式HP: transformer.co.jp/m/sirat  公式x:@sirat_jp

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