失われ、見つかり、そして忘れられる ── クリス・ステューシーが描く19の軌跡『Lost, Found & Forgotten…』

オランダのハウス・プロデューサー、クリス・ステューシーが、待望のデビュー・アルバム『Lost, Found & Forgotten…』を発表する。リリースは自身のレーベルUp The Stussから、2026年4月3日。長年にわたり世界中のダンスフロアを揺らしてきた彼が、19曲を通して自身の音楽的アイデンティティを総括する、最もパーソナルで広がりのある作品となる。

三つの章が紡ぐ、ひとつの視界

本作は「Lost」「Found」「Forgotten」という三つの章で構成され、それぞれが異なる角度から彼の創作世界を照らし出す。過去・現在・そして余白としての未来――それらが相互に呼応しながら、一貫したビジョンのもとで結びつく構造だ。アルバムは単なる楽曲集ではなく、時間軸そのものを横断する物語として設計されている。

凧のイメージに託された“創造の自由”

アルバムの象徴となるのは「凧」というモチーフ。空を自由に漂いながらも、糸によって大地と結ばれているその姿は、クリス・ステューシーの音楽観を体現している。感情や想像力の解放と、グルーヴやクラフトへの確かな接地。そのバランス感覚こそが、彼のサウンドを唯一無二のものにしてきた。視覚とコンセプトが密接に連動する点も、レーベルの美学を継承しながら新たな領域へ踏み出す意思表明と言えるだろう。

Lost:置き去りにされたアイデアの再発見

第1章「Lost」は、過去の制作過程で一度は行き場を失った楽曲群に新たな生命を与えるパートだ。断片的なアイデアや未完のスケッチが、現在の視点で磨き直され、完全な形として再提示される。過去の遺物ではなく、時間を経て再発見された現在進行形の音楽として響く。

Found:交流から生まれるインスピレーション

「Found」では、コラボレーションやディギング、他者との創造的な交換から生まれたインスピレーションが躍動する。多彩なアーティストが参加することで、サウンドはより広がりと情感を帯び、クリス・ステューシーの表現の可動域が一気に拡張される章となっている。

Forgotten:ディガーに捧げる静かな余韻

最終章「Forgotten」は、B面やディープカット的な美学を体現するパート。即効性よりも持続的な発見を重視し、聴き手が時間をかけて価値を掘り起こすことを促す。クラブ・ミュージックの“探究する楽しみ”を象徴する章と言えるだろう。

現実と非現実の境界を揺らす視点

『Lost, Found & Forgotten…』では、現実と幻想の境界が意図的に曖昧にされている。視点をズームイン/ズームアウトしながら体験する音像は、具体性と想像性のあいだを行き来する。これはデビュー作でありながら、これまでの歩みを俯瞰し、過去と現在、直感と意図を同時に見渡す総括的な作品でもある。

自由に漂いながらも確かな軸を失わない音楽。クリス・ステューシーの初アルバムは、聴き手それぞれに新たな着地点を提示する、発見のための旅路となるだろう。

Chris Stussy’s Lost, Found & Forgotten… (LP) drops via Up The Stuss on April 3 2026.

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