記憶と陶酔のフロア・エッセイ ── DJテニスが紡ぐ『fabric presents』最新章

ロンドンの聖地から連なる名門ミックス・シリーズ〈fabric presents〉に、DJテニスが登場。20曲で構成された最新コンピレーション/ミックスが、fabric Recordsよりリリースされた。新曲「Hello Hello」を含む本作は、サイケデリア、サウンドデザイン、そして初期レイヴの精神を編み込んだ、彼の現在地を示す音楽的自叙伝とも言える内容だ。

フロアの中心で“聴く”ことを学んだ、その延長線上に

「フロアの真ん中で迷子になることで、音楽の聴き方を学んだ」。そう語るTennisにとって、fabricは単なる会場ではなく、嗜好と美学を形成した原点だという。本作はジャンルや定型を超え、DIY精神に根ざした実験性とグルーヴを同時に追求。彼自身がRoom 1で実際にプレイするであろう楽曲のみを厳選し、記憶・影響・プロセスを“剥き出し”のまま提示する。

新曲「Hello Hello」が示す現在のクラブ美学

収録曲の中核を担うオリジナル「Hello Hello」は、歪んだ質感のベースラインがうねる、削ぎ落とされたクラブ・ウェポン。過剰な装飾を排しながら、身体感覚に直接訴えかけるミニマルな構造が印象的だ。フロアの機能性と内省的な没入感を両立させる手腕は、長年の現場経験に裏打ちされている。

先鋭とレジェンドが共存する20の断片

トラックリストには、Djrum、PAURRO、そしてアシッド・ハウスの象徴的存在ジョシュ・ウィンクらが名を連ねる。新旧が交錯する選曲は、DJテニスの幅広い視野とキュレーション能力を雄弁に物語る。音の質感や余白の扱い方に至るまで、20曲はひとつの連続した物語として機能している。

パンクからレイヴへ ── 異文化横断のキャリア

1990年代にはBlack FlagやMinor Threatのツアーマネージャーを務め、さらにはThe White Stripes、Sonic Youth、Björk、LCD Soundsystemらの欧州エージェントとしても活動してきたDJテニス。その後、レーベル〈Life and Death〉を主宰し、先鋭的な電子音楽のハブとしてシーンに影響を与え続けている。こうした越境的キャリアの積層こそが、本作の多層的な音像を支えている。

25年続く〈fabric presents〉の系譜に刻まれる新たな一章

四半世紀以上にわたり電子音楽の最前線を記録してきた〈fabric presents〉は、マルチネス・ブラザーズ、アンドリュー・ウェザオール、サージョン、ザ・ストリーツらを迎えてきた歴史的シリーズ。その系譜に加わる本作は、グローバルなエレクトロニック・ミュージック・シーンにおけるDJ Tennisの影響力を改めて証明するものだ。

記憶の断片、サウンドの実験、そしてフロアの律動。『fabric presents DJ Tennis』は、それらがひとつの脳内回路として接続された、極めて個人的でありながら普遍的なクラブ・ドキュメントである。

Buy/Stream: fabric presents DJ Tennis
https://fabric.lnk.to/HELLO_HELLO

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