
ベルリンとニューヨークを拠点に活動するアーティスト/振付家のコリン・セルフが、拡張版アルバム『respite ∞ levity for the nameless ghost in crisis』から最後の先行シングル「Sissykins (The Glass Hooker)」を発表した。ゲストには、エッジーなポップ感覚で注目を集めるメイシー・ロッドマンが参加。怪物めいた時代に差し出された、ダンスフロアのための異形の賛歌が姿を現した。
変異し続けるビート、歪む声の共同体
「Sissykins (The Glass Hooker)」は、まるでリアルタイムで形を変えていく生命体のようなトラックだ。ループするホーン、跳ねるビート、そして悪戯なグレムリンがミキシングボードを駆け回るかのような歪んだ音像が、ロッドマンの強迫的なボーカルの周囲で絡み合い、ねじれ、増殖していく。
「私はゴースト・ガール、夜になると生き返る」──そうラップする彼らの声は、不眠のまま覚醒してしまった意識のように揺らぎ、人間が通常は見ないはずのものを覗き込んでしまったかのような錯乱を帯びる。危うさと陶酔が同居するこの感覚こそ、セルフが提示する“踊るためのモンスター・ミュージック”の核心だろう。

光が分岐するように広がる拡張版アルバム
2月13日にリリースされる拡張版『respite ∞ levity for the nameless ghost in crisis』は、2025年発表のサード・アルバムに11曲を追加し、その射程をさらに押し広げた作品だ。セルフの音楽は、プリズムを通過した光が無数の色彩へと分かれるように、ひとつの源から多様な存在が立ち上がる瞬間を描き出す。
声そのものが持つ磁力、そしてプロデューサー/作曲家/パフォーマーとしての多層的な実践が重なり合い、作品全体はまるで音で築かれた聖堂のような輝きを放つ。亡きクィアの先人たちへのオマージュ、未来の異星ダンスフロアを思わせるビート、そして無限性への探究心が、拡張版ではより鮮明に浮かび上がっている。
コラボレーションが照らす新たな光源
拡張版では、旧知の仲間たちとの共作が重要な位置を占める。メイシー・ロッドマンとの「Sissykins (The Glass Hooker)」をはじめ、さまざまな声が差し込むことで、作品はさらに多声的な広がりを獲得した。セルフが志向するのは、単独の表現者としての完成ではなく、共同体的な創造行為そのものだ。
それぞれのコラボレーターは異なる角度から光を投げかけ、セルフのプリズムを横切って新しい色彩を生み出していく。その結果、アルバムは時間軸を横断しながら、過去の記憶と未来の夢を現在へと呼び寄せる装置として機能する。
声が導く、危機の時代のレヴィティ
コリン・セルフの作品の中心にあるのは、常に「声」だ。灯台のように迷える魂を導くその声は、ジェンダーやコミュニケーション、意識といったテーマを横断しながら、聴き手を安全な岸辺へと運ぶ。同時に、その表現は決して安定に留まらず、常に解体と再生のプロセスの中にある。
「Sissykins (The Glass Hooker)」は、そんなセルフの思想が最もダイレクトに体感できる一曲だ。夜更けに再生すれば、あなたの隣で踊り出す“誰か”の気配に気づくかもしれない。危機の時代にこそ必要な、奇妙で解放的なレヴィティ(軽やかさ)が、そこには確かに息づいている。

Artist: Colin Self
Title: respite ∞ levity for the nameless ghost in crisis (expanded)
Label: PLANCHA / RVNG Intl.
Cat#: ARTPL228EX
Format: Digital
Release Date: 2026.02.13
