「欲望も傷も抱きしめて」。Maaraが描く“自己選択”の物語 ── モントリオール/ベルリンを結ぶ14章の告白作

モントリオールとベルリンを拠点に活動するプロデューサー/DJ/ヴォーカリスト、Maaraがニューアルバム『Ultra Villain』をリリースした。NAFFから発表された本作は、欲望、失恋、執着、そして「自分を選ぶ」ことで得られる自由を主題に据えた、極めてパーソナルで物語性の高い14曲入りLPだ。

機能性よりも“語ること”を選んだサウンド

『Ultra Villain』は、トリップホップ、IDM、レフトフィールド・ポップ、オルタナR&Bといった要素を軸にしながらも、クラブ・ツールとしての即効性より、声と言葉による親密なストーリーテリングを優先した作品となっている。

「A Moving Blur」やタイトル曲「Ultra Villain」では、報われない愛の痛みや壊れてしまった関係の余韻が静かに描かれ、「Obsessive Compulsion」では侵入してくる思考や感情の息苦しさが実験的なサウンドで可視化される。答えを出すことよりも、変化を受け入れること。アルバム全体が、人生の重さを否定せず、そこから解放を見出そうとする姿勢に貫かれている。

自己信頼へとたどり着いたリードシングル

リード曲「I’m The One You Want」は、Maaraのキャリアにおける重要な転換点を示す一曲だ。重心の低いトリップホップ的ビートに、霞がかったテクスチャーと堂々としたグルーヴが重なり、囁くようなヴォーカルが確かな自信を滲ませる。

「人は、自分自身と向き合った地点までしか、他人とも向き合えない」。そんな実感から生まれたこの楽曲は、揺るぎない自己信頼へと至るプロセスそのものを音にしたようだ。

断絶と移動が刻まれた制作背景

本作の多くは、個人的な断絶を経験していた時期のモントリオールで書かれ、その後ベルリンへの移住によって形を変えていった。安心と混沌、停滞と解放――二つの都市が持つコントラストは、アルバムの情緒的な緊張感として鮮明に刻まれている。

ラストトラック「Come Home」は、2024年のMUTEK Montréalでの初ライブ直前に書かれた楽曲であり、都市への帰還であると同時に、自分自身へと戻るための曲でもある。

“誤解される自由”を受け入れるということ

幼少期から独学で音楽制作を続けてきたMaaraにとって、DJとプロダクションは常に別の表現でありながら、深く結びついた行為だった。『Ultra Villain』は、ヴォーカルと物語性、そしてライブ表現へと大きく舵を切った創作的転機であり、理解されないことすら引き受けた先にある解放の宣言でもある。

自分が何者であるかを知ること。その静かな確信が、このアルバムの最後には確かに残る。

Maara『Ultra Villain』作品情報

Artist: Maara
Title: Ultra Villain
Label: NAFF
Format: LP / Digital
Release Date: 2026年2月5日

Listen: Maara – Ultra Villain LP
https://naff.ffm.to/ultravillain

Tracklist
Glimmers of Hope
Burn Up
Ultra Villain
Obsessive Compulsion
Dangerous Games
NV-0
I’m The One You Want
The Chase
Gloves Off
Dirt
Kiss The Ring
Might Jump…
A Moving Blur
Come Home

今後のツアー日程

1月23日 – Smartbar(シカゴ)
1月31日 – TUNNEL(ロサンゼルス)
2月27日 – Squish(サンフランシスコ)
5月13日 – Nuits Sonores(フランス)

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