
第78回カンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞。そして第98回アカデミー賞®で脚本賞・国際長編映画賞の2部門ノミネート。
世界三大映画祭すべての最高賞を制したイランの巨匠、ジャファル・パナヒ監督の最新作『シンプル・アクシデント/偶然』が、いま世界の映画シーンの中心で強烈な存在感を放っている。
パルム・ドールからオスカーへ──止まらない評価の連鎖
本作はカンヌ国際映画祭最高賞に加え、ナショナル・ボード・オブ・レビュー、ニューヨーク映画批評家協会賞、ゴッサム・インディペンデント映画賞など、世界中の批評家賞を席巻。ゴールデングローブ賞では作品賞(ドラマ)ほか複数部門にノミネートされ、アメリカ映画協会(AFI)特別賞も受賞するなど、2025年の賞レースを象徴する一本となっている。
復讐か、誤認か──ユーモアと緊張がせめぎ合う物語
かつて不当に投獄され、拷問を受けた男ワヒド。ある偶然から、彼は“看守かもしれない男”と再会する。衝動的に男を拘束し復讐を試みるが、名前が一致しない。そもそも、目隠しをされていた彼は相手の顔を見たことがなかったのだ──。
確信の持てない復讐は宙づりとなり、ワヒドは同じ境遇を経験した仲間たちを訪ね歩く。真実を探る過程で、物語はサスペンスとブラックユーモアを巧みに交差させながら、観る者を倫理と感情の迷宮へと引きずり込んでいく。
パナヒ自身の体験が刻まれた、切実なスリラー
本作の根底にあるのは、ジャファル・パナヒ監督自身が二度にわたり投獄された経験と、獄中で耳にした無数の声だ。
それらをフィクションへと昇華し、単なる復讐劇を超えた“魂を揺さぶるスリラー”として結実させている。
ノンストップで連鎖する展開、笑いと恐怖が同時に迫る構成は、観客の集中力を最後まで解き放たない。
表現の自由を賭けて──監督の現在地
2010年以降、映画制作や海外渡航を禁じられていたパナヒ監督。2023年に制限が解かれ、最初に手がけた作品が本作だった。その結果、イラン映画として28年ぶりのパルム・ドール受賞という歴史的快挙を達成する。
しかし2025年末、アメリカでのプロモーション中に再び有罪判決が下されるという現実も突きつけられた。それでもなお、『シンプル・アクシデント/偶然』は世界へと放たれ、賞レースの只中で観る者に問いを投げ続けている。
2026年春、日本公開へ
『シンプル・アクシデント/偶然』は5月8日(金)より、新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国公開。
偶然から始まった出来事が、世界の映画史に刻まれる必然へと変わる瞬間を、ぜひ劇場で体感してほしい。
監督・脚本:ジャファル・パナヒ 『白い風船』『チャドルと生きる』『人生タクシー』『熊は、いない』
出演:ワヒド・モバシェリ、マルヤム・アフシャリ、エブラヒム・アジジ、ハディス・パクバテン、マジッド・パナヒ、モハマッド・アリ・エリヤ
2025年/フランス・イラン・ルクセンブルグ/ペルシャ語/103分/日本語字幕:大西公子/字幕監修:ショーレ・ゴルパリアン
配給:セテラ・インターナショナル/協力:ユニフランス ©LesFilmsPelleas
