光は分かたれ、歌は増幅する ── コリン・セルフ、拡張版『respite ∞ levity for the nameless ghost in crisis』を発表。Baths参加の新曲も公開

境界を越えて響く声──コリン・セルフという存在

ベルリンとニューヨークを拠点に活動するアーティスト/振付師、コリン・セルフ。Holly Herndonの重要なコラボレーターとしても知られる彼/彼女は、音楽、パフォーマンス、オペラ、振付を横断しながら、「声」と「身体」を軸にした独自の表現世界を築いてきた。

そのコリン・セルフが、サード・アルバム『respite ∞ levity for the nameless ghost in crisis』の拡張版を、2026年2月13日にデジタル・リリースすることを発表した。

11曲が加わる拡張版『r∞L4nGc』というプリズム

拡張版には、2025年2月に発表されたオリジナル・アルバムに、新たに11曲が追加収録される。その約半数はコラボレーション楽曲。コリン・セルフのクラフトというプリズムを、異なる角度から差し込む光が横切り、音楽は無数のスペクトルへと分岐していく。

鮮烈なディテールで振動する音の聖堂のように、小さな瞬間が積み重なり、オリジナル作が湛えていた瑞々しさは、より奥行きのある豊かさへと変貌している。

Bathsを迎えた新曲「The Thief’s Journal」

先行シングルとして公開されたのが、BathsことWill Wiesenfeldをフィーチャーした「The Thief’s Journal」だ。本楽曲は、もともとダンス・シークエンスのために書かれたものだったが、Wiesenfeldの手に委ねられることで、ゼロから再構築された。

抑制されたピアノ、流れ落ちるギターの旋律、そしてコリン・セルフのキャリアの中でもとりわけ切実なリリック。「それは確かな、ほんの一瞬のこと/もうこの気持ちと戦えない/安全な世界で、僕らは一緒にいる/今なら、やっと君にキスしてもいい?」

時間をかけて育まれた関係性が、ようやく結実する瞬間。その“待ち時間”までもが音楽として刻まれた一曲だ。

声が導く、亡霊たちへのレクイエム

『r∞L4nGc』の中心にあるのは、Selfの声だ。直感的で磁力を持ち、迷える魂を安全な岸辺へと導くようなその声は、亡きクィアの先人たちに捧げられた歌として、本作全体を貫いている。

異星のダンスフロアを思わせるビート、11分に及ぶクロージング曲「∞」に宿る自己解体的な無限性。これらは拡張版にも確かに息づいている。

コラボレーションが照らす、多声的な未来

Geo Wyexを迎えた「Alphabet’s Chant」、ベルリン放送合唱団の委嘱による「Nanti Polari」、Diamond Stingilyが参加する「disobedient daughters」。拡張版では、Selfが「他者と共に歌う」ことへの欲求を、これまで以上に鮮明に提示する。

とりわけ「Nanti Polari」で用いられるポラリ(かつて迫害されたクィアたちの隠語)は、本作全体を貫く“符牒”として機能し、過去と未来、沈黙と歌声を結びつける。

時間を解き放つアンセムとして

拡張版のラストを飾る「disobedient daughters」は、コリン・セルフが次なる方向性を示す楽曲だという。「私はあなたのために闘う/あなたが私のために闘ってくれたから/すべての人が自由になるまで/私は止まらない」。

この歌は、時間に縛られた「歌」という概念そのものを解体し、多声的な未来へと開かれていく。

分かたれた光が、世界を豊かにする

一本の光が分かたれることで、世界は増幅する。『respite ∞ levity for the nameless ghost in crisis(Expanded)』は、Colin Selfという存在が持つ多面性、協働性、そして未来への希求を、最も明確なかたちで刻印した作品だ。

静かで、しかし抗いがたい輝きを放つこの拡張版は、コリン・セルフの現在地であると同時に、これから向かう場所を照らす道標でもある。

リリース情報

Artist: Colin Self
Title: respite ∞ levity for the nameless ghost in crisis (expanded)
Label: PLANCHA / RVNG Intl.
Cat#: ARTPL228EX
Format: Digital
Release Date: 2026.02.13

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