トーキング・ヘッズを“黒いリズム”から読み替える──BBE発コンピ『Naive Melodies』が問いかける新たな音楽史

ニューウェイヴの裏側にあった、アフロ・ディアスポラの鼓動

トーキング・ヘッズの音楽を語るとき、ニューウェイヴやアートロックといった文脈が先行しがちだ。しかしそのリズムの核には、フェラ・クティ、パーラメント、アル・グリーンらに連なるブラック・ミュージックの血脈が確かに流れていた。その事実を真正面から掘り下げ、現代的な視点で再構築するコンピレーションが、『Naive Melodies』だ。

BBE × ドリュー・マクファーデンが仕掛ける“再文脈化”プロジェクト

本作をキュレーションしたのは、BBE Musicから高い評価を得たデヴィッド・ボウイ トリビュート作『Modern Love』を手がけたドリュー・マクファーデン。彼は本作において、トーキング・ヘッズのカタログを単にカバーするのではなく、ブラック・ミュージックの革新性というレンズを通して再解釈することを選んだ。

ソウル、ゴスペル、アフロビート、スピリチュアル・ジャズ、ラテン、ダブ──そうしたアフロ・ディアスポラ由来のリズムと精神性を前景化することで、トーキング・ヘッズの楽曲が本来内包していた“グルーヴの正体”を浮かび上がらせている。

ジャンルを越境する豪華アーティスト陣

参加アーティストは、リヴ・イー、ビラル、ジョージア・アン・マルドロウ、セオ・クロッカー、ミゲル・アットウッド・ファーガソン、ケニー・ドープ、アジャ・モネ、ロージー・ロウ、ホジェー、パチマンほか。アフロビートからジャズ、ソウル、ファンク、ダブ、エレクトロニカ、オーケストラルまで、スタイルは多岐にわたるが、共通しているのは「リズムを起点に音楽を再構築する姿勢」だ。

それぞれの解釈は自由でありながら、Talking Headsが持っていた反復性、身体性、祝祭性を、驚くほど自然に呼び覚ましている。

名曲たちが“今”の音楽として甦る瞬間

「Once In A Lifetime」「Psycho Killer」「I Zimbra」「Burning Down The House」、そして「This Must Be The Place (Naive Melody)」──これらの名曲は、もはやロック史の記念碑ではない。『Naive Melodies』の中でそれらは、ブラック・ミュージックの現在進行形として、再び踊り出す。

これはトリビュートではない。再文脈化(Recontextualization)であり、文化的対話であり、リズムの再覚醒なのだ。

トーキング・ヘッズの革新性を“起点”から問い直す

マクファーデンはこう語る。
「トーキング・ヘッズのサウンドにおける、しばしば見過ごされてきたブラック・ミュージックの影響を、真正面から照らし出したかった」

本作は、トーキング・ヘッズの偉大さを称えると同時に、ブラック・ミュージックがポピュラー音楽全体をどのように形作ってきたのかを再考させる一枚でもある。

作品情報

Various Artists – Naive Melodies
レーベル:BBE Music
フォーマット:2×12インチ・アナログLP
発売日:2026年1月23日

ニューウェイヴの名盤を、ブラック・ミュージックの系譜へと“帰還”させる試み。トーキング・ヘッズを愛するすべてのリスナー、そして音楽史を更新したいすべての人に手渡したい一作だ。

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