
VETHELの特集企画「音楽と〇〇」は、音楽と寄り添うさまざまなサブカルチャーとの交わりを探るインタビューシリーズ。〇〇はアートやゲーム、漫画、映画、ガジェット、建築、グルメ、旅行、乗り物、スポーツ、アウトドア……など何でもあり。音楽とその界隈の関係を語っていただきます。今回のゲストは?
京都でバスケットボールに打ち込んでいた少女が、今は東京でアイドルとしてステージに立っている。愛蘭にとって、音楽とバスケは遠く離れたものではない。どちらも「チームで作るリズム」であり、瞬間ごとの呼吸が命だ。ガードとして仲間の動きを見極め、最適なパスを出す。ライブでもメンバーの呼吸を感じながら一体感を生む──その根底には同じグルーヴが流れている。「ゾーンに入ると、白い糸が見えるんです」。そう語る愛蘭は、緊張を恐れずに舞台に立つ。先生から教わった「緊張するのは悪いことじゃない」という言葉を胸に、今日もステージでチームをまとめ、観客とつながる音を描く。その白い線の先に、彼女の未来がまっすぐに伸びている。

「もっとアイドル活動やりたい!」という気持ちが強くなりました
VETHEL 出身は京都とのことですが、上京のきっかけを教えてください。
愛蘭 オーディションのため、それだけです(笑)。京都にいたときは普通に働いていました。高校を卒業して就職して、最初は建設系の会社で事務をしていたんです。その後はホテルでウェディングプランナーやレストランの仕事もしたり……でも毎日が同じことの繰り返しで、なんだか面白くないなと思って。もともと歌やダンスが好きだったので、SNSでたまたま見かけた「上京アイドル」のオーディションを受けることにしたんです。シェアハウスもあると書いてあって、初めて東京で暮らすにはちょうどいいかなと思って。
VETHEL 実際に上京してみて、想像とのギャップはありましたか?
愛蘭 思ってたよりもプライベートの時間がちゃんとありますね(笑)。もっとアイドル活動ばかりの日々になると思っていたので、逆に「もっとやりたい!」という気持ちが強くなりました。
VETHEL 京都にいたころはどんな音楽を聴いていましたか?
愛蘭 流行ってる曲をよく聴いてました。K-POPも好きですし、TikTokで流れてくる曲もチェックします。あとはドラマやアニメの主題歌が好きで。俳優さんが好きになると、その人が出てる過去のドラマまで遡って観たりします。今一番好きなのは豊田裕大くん。演技も表情もすごく魅力的です。
VETHEL 一方で、バスケットボールもずっとやってたそうですね。
愛蘭 小中一貫の学校だったんですけど、すごく人数が少なくて。京都でも亀岡のほうなんで、めっちゃ田舎なんですよ。だから小学校も中学校も一緒で、部活の種類も全然なくて。運動系だとバスケかバレーか陸上ぐらいしかなかったですね。文化系もいくつかあったんですけど、私は運動がしたくて。実は双子なんですけど、もう1人も同じような感じで、2人で「バレーにする?バスケにする?」って迷ってたんです。で、体験でバレーもバスケも行ってみたら、バスケの先輩に「人数足りないから入ってほしい」って言われて。それで「じゃあバスケにしよっか」って感じで決めました。
本当にグルーヴがある瞬間、あれはもう“音楽”に近いと思う
VETHEL バスケで得た経験は、アイドル活動にも生きていますか?
愛蘭 めちゃくちゃ生きてると思います。バスケってチームプレーなので、メンバーの調子を見ながら動くのが大事なんです。私はガードだったので、みんなの状態を見てパスを出したり指示を出したりしていました。その感覚はグループ活動にも通じると思います。
VETHEL 愛蘭さんの中でバスケのリズムと音楽のリズムは繋がっていますか?
愛蘭 どこかで繋がってる感じはありますね。自分たちのゴールからすごく綺麗にパスが繋がって、最後にめちゃくちゃかっこいいシュートが決まる瞬間ってあるじゃないですか。ああいうのを見ると、ほんとにかっこいいなって思うし、めっちゃ気持ちいいですよね。なんかリズム感というか ── 。どれだけドリブルを使わずに、少ないパスでスッと攻め切れるか。それが思い通りにいったときって、本当に気持ちいいんですよ。しかも、そういうときって、チーム全員の気持ちがひとつになってないとできないんですよね。本当にグルーヴがある瞬間、あれはもう“音楽”に近いと思うんです。
VETHEL 「ゾーン」に入る感覚もあったと聞きました。
愛蘭 他の人は分からないですけど、バスケをしてるときに、これがゾーンかな?っていうのを感じたことが何回かあって……ゾーンに入ると、白い糸みたいな線が見えるんですよ。その線に沿ってボールを出せば、絶対パスが通る。数回だけど、あの瞬間は本当に不思議です。ステージ上でも、いつかその“白い線”が見えるようになりたいですね。
コートとステージでは緊張の“種類”が違うな
VETHEL 現在はグループのリーダーですが、どんなチーム作りを意識していますか?
愛蘭 うちのグループ、全員個性が強いんです(笑)。だから私は、みんなに自由にやってもらって、足りないところをサポートする感じ。バスケのときもそんな立ち位置でした。ただ、リーダーってなると一歩引いてしまう部分もあって、そこは今の課題です。自分も一人のメンバーとして輝きながら、全体をまとめるバランスを模索しています。
VETHEL ステージに立つ前のルーティンはありますか?
愛蘭 特にはないけど、私はとにかく“緊張しい”なんです。どんなときでも緊張する。でも歌の先生に「緊張しない人はいない。緊張するのは悪いことじゃない」と教えてもらいました。だから今は、緊張を受け入れてステージに立っています。緊張しても、ちゃんと声を出せるように腹式呼吸で整えています。
VETHEL アイドルとして初めてステージに立ったときと、バスケで初めてコートに立ったとき、何か違いがありましたか? それとも同じ緊張感?
愛蘭 バスケって、どうなるか分からないじゃないですか。対戦相手によって戦い方も全然違うし。試合も探り探りやっていく中で自分たちのプレーをしながらも、相手に合わせて調整していくような感じで。ピックのときも、だいたい自分に合いそうな人を選ぶんですけど、そのポジションがどの人なのかを探りながら、みんなで変えていったりもして。自分たちでチームや試合を作り上げていく感じなんですよね。でも、初めてのライブのときは「これまで練習してきたものを見せる」みたいな感じ。バスケって、同じようなシチュエーションが何回も来るじゃないですか。40分間ある中で、その都度「さっきこうだったから、今度はこうしよう」とか、試行錯誤しながら考えを変えられるんですよ。でも歌のステージって、もう“一発勝負”なんですよね。「もう一回歌います」って、あんまりないじゃないですか。だから、緊張はどっちでもしたんですけど、緊張の“種類”が違うなっていうのは感じましたね。
VETHEL 最後にワンマンライブを満席にできたとき、どんな表情をしていたいですか?
愛蘭 多分、そのときも緊張してると思います(笑)。でも、見に来てくれる人たちの期待に応えたい。その気持ちがあるから、ずっと緊張しながらでもステージに立ち続けるんだと思います。

Interview & Text : VETHEL
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