生きることを再定義する音──ポルトガル・ザ・マン、10作目『SHISH』で原点と未来をつなぐ

アラスカの魂が息づく“自己再発見”のアルバム

グラミー受賞ロックバンド、ポルトガル・ザ・マンが、通算10枚目となるニュー・アルバム『SHISH』(シシュ)をリリースした。自身のレーベル KNIK/Thirty Tigers から発表された本作は、デビューから約20年を経た今も進化を止めない彼らが、「生きるとは何か」を見つめ直すために制作した、きわめてパーソナルかつスピリチュアルな作品である。

バンドの原点であるアラスカの大地に根差した哲学──「必要なものだけを取り、他者を思いやり、学びを分かち合う」──が全編を貫き、人生の再評価と再発見をテーマに据えている。
フロントマンのジョン・ガーリーは、希少な遺伝性疾患を持つ娘を育てながら得た気づきを、かつてないほど率直な言葉とサウンドで表現したという。

ジャンルを超えた音の旅路

『SHISH』は、ガーリーの自宅スタジオで制作され、共同プロデューサーには旧友でもある俳優/ミュージシャンのケーン・リチョットを起用。これまで Danger Mouse、Jeff Bhasker、マイクD(Beastie Boys) らとのタッグで磨かれてきた制作スキルを凝縮しながらも、今作ではあえてミニマルな体制で臨み、“生の感性”を前面に押し出した。

「Denali」「Pittman Ralliers」「Knik」「Father Gun」など、楽曲タイトルの多くはアラスカの地名や象徴に由来しており、そこに込められた郷土愛と人生観がアルバム全体を貫く。ポップ、サイケデリック、ソウル、スラッシュメタル、プログレといった多彩な音楽的要素が交差し、ポルトガル・ザ・マンが長年培ってきた“ジャンルを超える探求心”が結実している。

ダンスフロアから人生へ──“The Lords of Portland”が描く新章

本作のリリースに合わせて、バンドは「デナリ・ヘッドラインツアー」を始動。ポートランド、ロサンゼルス公演はすでにソールドアウトとなっており、今後はUK/ヨーロッパを巡る1か月間のツアーも予定されている。また特別企画「The Lords of Portland Present Portugal. The Man」では、レア曲やカバー、限定グッズを携えたアンダープレイ・ショーも開催される。

ポルトガル・ザ・マンは、グラミー受賞曲「Feel It Still」の世界的成功以降も、ただヒットを追うのではなく、音楽と社会的メッセージの双方を軸に活動を続けてきた。『SHISH』はその歩みの延長線上にありながら、より原点的で、より“人間的”な音を響かせる作品である。

Portugal. The Man『SHISH』配信中
配信リンク:https://portugaltheman.ffm.to/shish
レーベル:KNIK / Thirty Tigers

Tracklist:

  1. Denali
  2. Pittman Ralliers
  3. Angoon
  4. Knik
  5. Shish
  6. Mush
  7. Tyonek
  8. Kokhanockers
  9. Tanana
  10. Father Gun

“SHISH”は、生きることの痛みと美しさを抱きしめるための音楽である。

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