水が記憶を語りはじめる──COLA REN『Mekong Ballad』が描く、流動する詩と音の境界線

広州から世界へ、音で“水”を描く若き詩人

中国・広州を拠点に活動するプロデューサー/DJ、COLA RENが、名門レーベルHuman PitchからニューEP『Mekong Ballad』を11月5日にリリースする。本作からの最後の先行シングル「Be Water」がMixmagにてプレミア公開され、彼女の新たな音楽的変化が注目を集めている。
「Be Water」はトランペッターrrrrrmをフィーチャーしたアンビエント・ジャズで、水の流れのように変化し続けるサウンドスケープが印象的である。広州の都市の喧騒と、メコン川の流れを思わせる自然の静けさ──その両方を内包したCOLA RENの音は、まさに現代アジアを象徴する“有機的モダニズム”の具現である。

名門Human Pitchが見出した、新たな声

本作をリリースするHuman Pitchは、ニューヨークを拠点にTristan Arp(Asa Tone)とSimiseaが主宰するレーベルで、SalamandaやLe Fritらの実験的作品を発信してきた。そんな同レーベルがCOLA RENと契約したことは、アジアのアンビエント〜エレクトロニカ・シーンにおける大きな出来事といえる。
COLA RENはこれまで、フィールドレコーディングやエレクトロニクスを駆使して都市と自然、記憶と夢の狭間を描いてきた。本作『Mekong Ballad』では、自身の“声”を初めてフィーチャーし、より詩的で人間的な表現へと踏み出している。

川が語る、記憶と夢の五つの断章

EPには、熱帯の湿度と川の呼吸をテーマにした全5曲を収録。サックス奏者tgaやトランペットのrrrrrmが参加し、アンビエントの静謐さに有機的なジャズの息吹が重なる。
タイトル曲「Mekong Ballad」では、詩人**J-Fever(小老虎)**が中国語詞を手がけ、COLA REN自身の歌声が淡く響く。落ちた果実、流れる水流、月光が差す河口──断片的な情景が音とともに浮かび上がり、リスナーを記憶の旅へと導く。

また、CD限定盤には台湾のMong Tong、中国のGuohan、そしてエレクトロニック・アーティストWu Zhuolingによるリミックス3曲を追加収録。原曲の水の詩情をそれぞれの文脈で再解釈し、アジアの音楽的多様性が一枚に凝縮された特別仕様となっている。

COLA RENという“流れ”の現在地

クラシックピアノと写真芸術の背景を持つCOLA RENは、ロンドン、ロサンゼルス、北京、上海といった都市を経て、独自の感性を磨いてきた。2023年には自身のレーベル〈AMWAV〉を設立し、デビューEP『Hailu』で国際的な評価を獲得。
彼女の音楽は、都市生活者の感情、記憶、そして時間の流れを“水”のように描写する。その静かな波紋は、アジアから世界のエレクトロニック・シーンへと広がりつつある。

Tracklist:

  1. Mekong Ballad
  2. Be Water
  3. Fallen Papaya
  4. Ripples
  5. A Sudden Wind

CD Bonus Tracks:
6. Mekong Ballad (Guohan’s Dub)
7. Mekong Ballad (Mong Tong Remix)
8. Mekong Ballad (Wu Zhuoling Remix)

リリース情報

静かに揺らめく音が、記憶の底を流れていく──COLA REN『Mekong Ballad』は、水が語る詩のように、心を満たす。

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