岡本太郎と「太陽の塔」の核心に迫る ── 企画展「岡本太郎と太陽の塔―万国博に賭けたもの」開幕

1970年に開催された日本万国博覧会(大阪万博)で、会場中央にそびえ立った「太陽の塔」。その異形とも言える姿を創り上げた芸術家・岡本太郎が、どのような思想と情熱をそこに注ぎ込んだのかを紐解く企画展が、川崎市岡本太郎美術館にて開催される。タイトルは「岡本太郎と太陽の塔―万国博に賭けたもの」。会期は2025年4月26日(土)から7月6日(日)まで。

「人類の進歩と調和」への反逆としての芸術

大阪万博のテーマは「人類の進歩と調和」であったが、岡本太郎はこの言葉にあえて異を唱えた。テーマ展示プロデューサーとして就任した岡本は、「進歩」や「調和」といった近代主義的価値観に対し、人間の根源的な力にこそ目を向けるべきだと考え、「太陽の塔」をシンボルとして打ち立てた。その造形はモダニズムと決別するものであり、多くの賛否を巻き起こした。

民族学から生まれた「人間の原点」へのまなざし

岡本太郎の表現の礎には、若き日にパリ大学で学んだ民族学がある。マルセル・モースの薫陶を受け、パリの人類博物館で出会った仮面や神像の持つ原初的な力は、彼の創作に深く根を下ろした。帰国後は日本各地の祭礼や神事を取材し、「縄文の美」の発見にもつながる。今回の展覧会では、こうした民族学的視点がどのように「太陽の塔」や地下展示空間に反映されたのかを探っていく。

展示構成と見どころ

展覧会は五章構成で、パリ時代の学びから国内でのフィールドワーク、「明日の神話」といった前哨戦を経て、「太陽の塔」と地下展示の誕生、そして万博がもたらしたものへと物語は進む。

注目すべきは、岡本太郎が実際に制作した塔の模型や、建設過程を記録した貴重な写真群の公開である。さらに、昭和女子大学や武蔵野美術大学から借用した世界各国の仮面・神像資料も展示され、「いのり」の空間に込められた精神性を現代に甦らせる。

また、日本工業大学の学生たちが7年にわたり制作・改良を続けたVR作品「甦るVR太陽の塔」が2D映像として公開され、かつての地下空間を視覚的に体感できるのも魅力である。

「ただの祭り」ではなく、「聖なる祭り」へ

岡本太郎は、万博を単なる「お祭り」ではなく、人間の誇りと歓びが爆発する「聖なる祭り」として実現しようとした。「太陽の塔」はその中核であり、彼が賭けた想いの象徴である。本展では、彼の思想や挑戦の軌跡を丁寧にたどりながら、現代に問われる「人間の原点」とは何かを来場者に投げかける内容となっている。

目次

「岡本太郎と太陽の塔―万国博に賭けたもの」

会期:2025年4月26日(土)~7月6日(日)
会場:川崎市岡本太郎美術館(企画展示室)
観覧料:一般900円、高・大学生・65歳以上700円、中学生以下無料 ※団体割引あり
休館日:月曜日(4月28日、5月5日を除く)、5月7日・8日
同時開催:常設展「オカモト・ア・ラ・モード おしゃれの法則」

関連イベントも充実
子ども向けスタンプラリーや、1970年万博を振り返る映像上映、学芸員によるギャラリートークなど、会期中はさまざまな企画が予定されている。詳細は公式サイトを参照のこと。

川崎市岡本太郎美術館公式サイト

岡本太郎が命をかけた「祭り」を、その源流からもう一度体感してみてはいかがだろうか。

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