夜明けと黄昏のあいだを漂う ── Amand & Capoon『Ouverture EP』が描く音の詩学

有機的サウンドが紡ぐ“夜から朝”の物語

Amandがベルギーの新鋭Capoonとタッグを組み、レーベルAll Day I Dreamから最新作『Ouverture EP』をリリースした。本作にはイスラエルの才人Khenによるリミックスも収録されており、オーガニック・ハウスの美学をさらに深化させた一枚となっている。

二人が共鳴するのは、“音で物語を語る”というアプローチである。EPの構成はまるで薄明から夜明けへと移ろう時間そのもの。流麗なパーカッションと穏やかなシンセが心の内側を照らす「Ouverture (Pt. 1)」から、旋律が重なり、ヴォーカルとリズムが静かに高揚していく「Ouverture (Pt. 2)」へと続く12分間の旅路は、まるで夢と現実の境界を歩くような感覚をもたらす。

Khenが描くもうひとつの風景

リミキサーとして参加したKhenは、原曲の温もりを保ちながら、より緻密で立体的な構成へと昇華。彼特有のメロディックな構築美と精密なグルーヴコントロールが融合し、幻想的な原曲に新たな重力を与えている。静謐でありながらも、確かな推進力を感じさせるリミックスである。

“All Day I Dream”が示す音の哲学

『Ouverture EP』は、リー・バリッジ率いるAll Day I Dreamのキュレーション精神──“音で心を開く”という理念──を体現する作品でもある。Amandは同レーベルの常連アーティストとして、これまで『Summer’s End Sampler』や『Lost Desert & Friends』に参加してきた。CapoonはCrosstown RebelsやEinmusikaなど多彩なレーベルで活動しながら、今回がAll Day I Dream初参加。東洋的な音階や民族的リズムを取り入れた彼の感性が、Amandの繊細なメロディと美しく溶け合っている。

音が“時間”を超える瞬間

『Ouverture』とは、フランス語で“序曲”を意味する。夜と朝のあいだ、沈黙と鼓動のあいだに広がる音の風景──その名の通り、本作は新たな章の“はじまり”を象徴する。
静寂から生まれ、光へと溶けていく音の連なりは、All Day I Dreamが追い求めてきた“感情の風景”そのものである。

トラックリスト

  1. Ouverture (Pt. 1)
  2. Ouverture (Pt. 2)
  3. Ouverture (Khen Remix)

配信リンク: https://orcd.co/_ouverture


Amand & Capoon『Ouverture EP』──それは、心の夜明けを告げるための音楽である。

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