
ファッション写真に革命をもたらした英国の写真家、デヴィッド・ベイリーの大規模回顧展「David Bailey’s Changing Fashion(チェンジング・ファッション展)」が、2025年6月28日よりスペイン・ガリシア州ア・コルーニャにて開幕する。主催は、Marta Ortega Pérez(マルタ・オルテガ・ペレス)率いるMOP財団。本展は、ベイリーにとってスペイン初の大規模展となる。
常識を打ち破り、時代を形づくったレンズ
デヴィッド・ベイリーは、1960年代のスウィンギング・ロンドンを象徴する写真家として知られる存在である。彼のレンズは、スターたちのポートレートをただ記録するだけでなく、時代そのものを演出し、カルチャーを変えた。ジャン・シュリンプトンやミック・ジャガー、ルドルフ・ヌレエフ、セシル・ビートン、そしてロンドンの裏社会を象徴するクレイ兄弟まで、彼が切り取った被写体たちは、ファッションとスキャンダルの間を自在に行き来する存在であった。
本展では、1960年代〜70年代に撮影された140点以上の作品を展示。そのうちには初公開作品も含まれており、まさに“生きたカルチャー史”が立ち上がる内容となっている。
ボックス・オブ・ピンナップス、そしてベイリーのナイトクラブ
展示は、ベイリーの代表作のひとつ「Box of Pin-Ups(ボックス・オブ・ピンナップス)」に特に焦点を当てる。これは、ロンドンの華やかな36人のセレブリティたちを独自の視点で収めた写真集であり、写真表現とメディアの境界を揺さぶった記念碑的作品である。
また、展示空間には、ベイリーのスタジオの再現も施される。VOGUE編集者ダイアナ・ヴリーランドの「ペンのスタジオが大聖堂なら、ベイリーのそれはナイトクラブだ」という言葉が象徴するように、その空間は写真の“神聖性”を覆す自由と奔放に満ちていた。
文化としての写真 ── MOP財団の挑戦
「デヴィッド・ベイリー:チェンジング・ファッション展」は、MOP財団が手がける国際写真展シリーズの第5弾である。過去にはピーター・リンドバーグ、スティーヴン・マイゼル、ヘルムート・ニュートン、アーヴィング・ペンといった巨匠たちの展覧会を成功させ、スペインにおける写真文化の中心地としてア・コルーニャの名を確立してきた。
マルタ・オルテガ・ペレスは本展について次のように語っている。
「ベイリーは、ファッション写真のルールを壊し、新たな美学を打ち立てた写真家です。この展覧会は、彼が切り取った黄金の瞬間を通じて、文化そのものの変化を目撃できる場となるでしょう」
展覧会では、ベイリーが1976年に創刊に携わった雑誌「Ritz」から着想を得た出版物の配布や、特別映像作品の上映も予定されている。スタイル、音楽、ファッション、写真 ── それらが交錯する60年代と70年代の熱気を、いま再び体験する絶好の機会となるはずだ。
〈David Bailey’s Changing Fashion〉
開催日:2025年6月28日(土)より
会場:スペイン・ガリシア州ア・コルーニャ(MOP財団展示スペース)