[Something Essential for Your Life]もしあなたの人生が映画ならサントラに絶対必要な曲は? ゲスト:井上河

VETHELの音声連動コンテンツ「Something Essential for Your Life」。第一回のテーマは「もしあなたの人生が映画だとしたら、サウンドトラックに絶対必要な曲は?」。それぞれの瞬間で監督(ゲストご自身)はどんな曲をかけ、どんなドラマチックなストーリーにし、一本の映画になるのか……そんな架空のサウンドトラックをじっくりと考えてきていただきました。本日のゲストは作編曲家の井上河さんです。

山梨県にて幼少期は過ごした。彫刻家の父親(井上麦)は国際的に活動していたこともあり6歳〜12歳をブラジルに2年とアルゼンチンに4年間暮らす。現地の小学校に通っていたこともあり今でもスペイン語は日常的に会話出来る。帰国後は山梨の中学校に通うが、環境の違いから上手く馴染めず学校を休みがちになる。14歳のとき音楽で生きていくと決め独学でギターを始める。高校生になりバンド活動を徐々に行なっていった。18歳になり上京し、東京ビジュアルアーツ専門学校にて音楽を一から学ぶ。当時はバンドのギタリストとしてライブ活動をし、同時に作曲も始める。卒業後は、在学時に出会ったギタリストiwachanに師事し音楽全般について学ぶ。20歳からワオ・コーポレーションで作編曲家として専属契約をし作家活動を始め、同年より日本テレビBGMライブラリに楽曲提供。都内でサポートミュージシャンとしても活動。https://koinouecom.wordpress.com/

VETHEL 本日のゲストは作編曲家でギタリストでもある井上河さんです。よろしくお願いします。まず、井上さんの自己紹介を簡単にお願いします。

井上河 井上河です。もともと作曲家として活動をしておりまして、今28歳です。両親が彫刻家で海外に住んでいたときから、いろいろな音楽を聴いてきて、芸術の方に関わることが多かったです。で、中学生になって帰国してからギターを始めて音楽の道に進みました。

VETHEL では早速行きましょう。映画がスタートします。自分が生まれたとき、どんな曲を流しますか?

井上河 生まれたときですとカーペンターズの「 イエスタデイ・ワンス・モア」です。小さいときに聴いていた音楽で、お父さん、お母さんがカーペンターズが大好きで、車の中でズーッと永遠ループで流れていて、メロディが残っている曲ですね。

VETHEL 今も聴くと小さい頃を思い出すみたいな、そういう感じですか?

井上河 懐かしい気持ちになりますね。

VETHEL 次は実際に初めて自分から耳にした曲。

井上河 これもちょっと似てるんですけど、同じ状況で聴いてたんです。アルゼンチンの楽曲でメルセデス・ソーサの「Solo Le Pido a Dios」。直訳で言うと“神に祈る”みたいな重い内容なんですけど、この楽曲が耳に残るのもあるんですけど、ジャンルとしては、フォルクローレっていうジャンルをポップスに持ってきた歌手なんです。僕は一歳のときにアルゼンチンに行っていたみたいで、そのときにCDを買って、小学生のときにそれがズーッと車の中で流れていて、戦争とか重い内容なんですけど、それを歌うことで国がひとつになったみたいな、すごく有名な方で、もう亡くなっちゃったんですけど、アルゼンチンに住んでたときに家族で劇場に聴きに行って、これが本当の音楽だなみたいな。そういう認識を持ちました。

VETHEL かっこいいと思った?

井上河 かっこいいっていうか……芸術的な……そうですね、かっこいいと思いました。

VETHEL なるほど、ワールドワイドですね。次に小学校、中学校高校を表すテーマソングは何でしょう?

井上河 中学校のときにギターを始めて、そのときに聴いていたグリーン・デイの「マイノリティ」。

VETHEL 急にグリーン・・デイ(笑)。

井上河 パンクがいいなって(笑)。「マイノリティ」って少数派のことを歌ってるのが響いたっていうのもありますし、歌詞もそんなに分かってなかったけど、これを聴いたときに、世界共通だな、どこにいてもこの曲を聴いて感動するんだなっていうふうに感じました。

VETHEL それまではロックやパンクは聴いてこなかったんですか?

井上河 そういうわけじゃないです。聴いてたけど、改めていいと思ったというか……もちろんJポップとか聴いたり、いろいろな音楽を聴こうっていう時期で、そのころにグリーン・デイは、海外に行ったときはみんなが聴いてたとこもあるんですけど、改めて聴いてみたときに、やっぱりこれ、いいなって感じました。

VETHEL ギターのコピーしたり?

井上河 やってましたね、地元が山梨で田舎なんですけどアンプを繋いで、暑いから窓を開けて爆音で(笑)。

VETHEL まかり間違ってたらパンク野郎になってたかもしれないと(笑)。次にこれまでやってしまった最大の失敗をしたときに何をかけますでしょうか?

井上河 またワールドワイドに戻るんですけど、これは「ブエノスアイレスの春」っていう、タンゴで有名なアストル・ピアソラの楽曲。高校時代に、コントラバスを演奏してくれないかっていう頼みがあって、学校でコンテストに出るために選ばれた曲がこの楽曲。序盤の入りから緊張感があるというか、コントラバスは弦楽器ですけど、リズムを叩いて音を出す演奏が序盤のところであったんです。そのときに手が真っ青になるぐらい叩いて。緊張感を楽しんでたっていう意味で失敗のときの楽曲でに自分にはなってるなって思っていて。

VETHEL コントラバスは経験あったんですか? 

井上河 なかったんですけど、ギターと同じ弦楽器だからいけるでしょうと(笑)。

VETHEL そして、これまでやり遂げた最大の成功をしたときの曲は何をかけますでしょうか?

井上河 サカナクションの「新宝島」。作家活動を始めたのが20歳から作家事務所に入って、楽曲制作をズーッとやっていて、ちょっと気が狂ってきたかなみたいな感じのときに、目覚ましにしていたんですよね(笑)。あのイントロを聴くと、あ、頑張れるっていう。そのころの原動力みたいな感じです。たまに聴くとやっぱ元気が出る。

VETHEL 原動力にしては優しい音じゃないですか(笑)?

井上河 包まれる感じが結構好きで。

VETHEL そして、今すぐ聴きたい曲は何ですか?

井上河 TOTOの「ホールド・ザ・ライン」。ザ・ハードロックって感じの楽曲で、TOTOは18歳ぐらいのときに聴くようになって、来日も何年か前にあって武道館に見に行ったんですけど、やっぱり、かっこいいなって、シンプルに。

VETHEL それはTOTOの音楽がかっこいい。

井上河 音楽がかっこいい。もちろん存在としてもかっこいい。この歳になってもやってるんだ、そんな高い声が出るんだみたいな。自分の中では教科書みたいな存在です。

VETHEL 28歳だと音が古くさいなって感じないですか?

井上河 元々そういうのが好きっていうのもありますね。生楽器だったり、生バンド系の曲が好きなんです。

VETHEL では、これまでの人生で最も耳にした曲はなんでしょうか?

井上河 「上を向いて歩こう」。両親がよく聴いてたとかそういうわけでもないんですけど、有名ですよね。どこかしらで流れてるっていうのもあるんですけど。20歳ぐらいのときに介護施設を回って演奏するっていうことをやっていたんです。そのときに必ず、この曲で締めるみたいな。おじいちゃん、おばあちゃん、よく知ってるから。初対面でもみんなひとつになるような楽曲だなって。そういう意味で、結構聴いてきたなというのがあります。これからも聴きたい1曲ですよね。

VETHEL 次に大事な人にあげたい曲はないでしょう?

井上河 これはアヴィーチー「ヘヴン」。

VETHEL アヴィーチー(笑)! 飛び過ぎじゃないですか?

井上河 (笑)。アヴィーチーも10代のときによく聴いていて、何年か経って“このアーティスト、前は聴いてたけど、最近はどうなんだろう”と思って、亡くなった後に出たアルバムですけど、やっぱりいいなって思いますし、メッセージ性というか思いがあるので、大事な人にあげたいってなったらこれだなって思いました。

VETHEL 映画の終盤で、いよいよ死ぬとき=エンディングにはどんな曲が流れてますか?

井上河 またワールドワイドなんですけどエンヤの「ワイルド・チャイルド」。教会の感じではありますけど、特に宗教とかそういうのは関係なくて、僕は声フェチで、周波数的なところが好きで、これを聴いて眠りたいと思いました。

VETHEL そして、最後のエンドロールにはどんな曲が流れているでしょうか。

井上河 最後はJポップで綾香の「ネオンライト」。綾香は結構好きで、ライブに行ったりもするんですけど、エンドロールって考えたときに、ひとつの映画で終わる、寂しいなという気持ちはあるので、この曲が、つかめそうでつかめないみたいな感じの、でも次につながるんじゃないかっていうちょっとワクワクを感じるんです。続編的なものもありますよっていう、受け継いでいく感じがしたらいいなって思いました。

VETHEL ちなみに今日挙げていただいた10曲は、自分の作編曲家としてのバックボーンにもなってるんですか?

井上河 そうですね。そういう意味でもいろいろなジャンルのものが混じっちゃってるのも、それが今に至るという感じですね。

VETHEL リスニング脳と仕事脳は一緒ですか、別ですか? リスニングしていて、この曲いい曲だなって思ったときに、カチッと、こういうふうに作曲するんだとか、こういうふうに編曲するんだみたいなところになったりします?

井上河 切り替わるというか、常にそれを意識してしまう。こういう進行してんだとか、ここでこのコードにいくんだなとか、メジャーセブンス行くんだみたいな。だから曲を聴いていて、飽きちゃうこともありますよね、例えばコード進行が同じパターンだったりすると、そこでスイッチ切れるじゃないですけど、またこういう展開かみたいな。そういうのはちょっと辛いですね(笑)。

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INTERVIEW & TEXT : VETHEL

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