
スラブ神話が息づく、濃密で儀式的なサウンド
ロシア出身の新鋭プロデューサー、HAUKがHypnoVizionから『MYTHOPOESIS』EPをリリースした。本作は全3曲で構成され、スラブ神話の情念とダークなエレクトロニック・サウンドが融合した、濃密な没入型の作品である。儀式の鼓動にも似たリズムと、暗雲に包まれた音像が描き出す世界は、リスナーを静かに、しかし確実に異界へと引き込む。
Rezzから受けた衝動と、故郷の神話が生んだ音
HAUKは本作について、自身が電子音楽に対して希望を見失っていた時期にRezzの作品が光をもたらしたと語る。また、その再生の過程で自身のルーツであるスラブ神話への探求が強まったという。電子音楽と土着の神話的精神性が交差することで生まれた音像は、現代的でありながら原初的な熱を宿している。
トラックごとに異なる“神話”が息づく
- On The Buyan Island
幻島・ブヤン島を巡る神話の霧の中を漂うような、幽玄の開幕曲。 - LIHO
強烈な緊張と呪詛めいたムードが支配する、影の精霊“リホ”の名を冠した楽曲。 - BLOOD RITUAL
最も生々しく、最も決定的。EP全体を象徴する儀式の音。
ロシア音楽シーンで存在感を増す新世代
HAUKは2022年にRussian World Music Awardを受賞するなど、すでに本国シーンにおいて一定の評価を得ている存在である。『MYTHOPOESIS』は彼にとってHypnoVizionからの初リリースとなり、世界的なステージへ踏み出す重要な一枚と言える。

『MYTHOPOESIS』は、単なる“ダークでクールな電子音楽”にとどまらない。
それは、音が記憶を呼び戻し、血の奥底に眠る神話的感覚を目覚めさせる、ひとつの儀式である。
今、異界への扉は開かれた。
