
クラシカルなルーツを純粋な形で提示する試み
世界的DJ/プロデューサー、アーミン・ヴァン・ビューレンがキャリア初となるアコースティック・アルバム『Piano』を10月31日にリリースする。Armada Musicからの発表で、アルバムはまずApple MusicおよびApple Music Classicalで1週間の先行独占配信を経て、11月7日に全ストリーミング・サービスへ広く展開される。先行曲「Sonic Samba」はすでにApple Music上で配信が開始されている。
『Piano』は、アーミンが20年以上にわたり構築してきたトランス/ダンスミュージックの巨大なレガシーから一歩距離を置き、自らの内側に存在していたクラシカルなルーツを純粋な形で提示する試みである。幼少期から、ピアノを弾く父の影響で自然とクラシックへ親しんできたアーミンは、約10年にわたる個人的な学習と作曲の時間のなかで、既存曲の演奏に飽和したのち、自らのメロディを生み出す方向へと舵を切ったという。その創作を導いたのは、作曲家ヘロニモ・スナイトスホイベルとの継続的なレッスンであった。
収録される15曲は、家族や記憶、自然、そして自身にとって極めて私的な瞬間から生まれたものだという。特に「Fathers & Sons」は、本作の方向性を決定づけた原点として語られる。また、アルバムにはロバート・マイルズ「Children」のピアノ・インターポレーションも収録され、アーミンの“電子音楽の起点”と“原初の音楽体験”の架橋として機能している。

2025年初頭、ユトレヒトのConcertLabにて行われ、すべて一発録りで収録
演奏は2025年初頭、ユトレヒトのConcertLabにて行われ、すべて一発録りで収録された。作品はドルビーアトモスでミックスされ、ピアノ独奏のほか、チェロおよび室内オーケストラ編成も参加している。その中にはヴァイオリニストのリサ・ヤコブスの名も含まれる。
アーミンは本作についてこう語る。
「鍵盤の前で旋律を作ることは、いつも自分の音楽の出発点だった。ビートを手放して、ただ指先だけで音を紡いだとき、自分がどこから来たのかが鮮明に見えた。このアルバムは自分にとって最もパーソナルな作品だ。」
EDC、Ultra、Tomorrowlandといった世界的フェスティバルのメインステージを揺らし続けてきた男が、いま“静けさ”へと還る。その軌跡は、電子音楽の外側に新境地を求めたのではなく、むしろその核にあるメロディの源泉を提示する行為なのだ。
『Piano』は、巨大な音の海の中心にある、小さくて確かな光を映し出す作品となっている。
