
アンビエント・アーティストであり、インディ・フォーク・バンドFloristのフロントマンとしても知られるエミリー・A・スプレイグが、ニュー・アルバム『Cloud Time』(10月10日発売/RVNG Intl./PLANCHA)から最後の先行シングル「Each Story」をリリースした。
本作は、彼女が2024年秋に行った初の日本ツアーの最終公演地・長野のリスニング・フェスティヴァル〈Each Story〉での演奏をもとに制作された楽曲である。アルバムのラストを飾るこの曲は、記憶や感情の残響と調和しながら静かに終着へと向かう、深い内省の旅を描いている。
スプレイグは次のように語る。
「『Cloud Time』には、さまざまな感情が込められていますが、それらを受け入れ、ただ私たちの中を通り過ぎていくものとして描いています。それは、1日という時間の流れや、人生そのもののようなものなのです。」
「Each Story」は、回想と受容の響きを帯びた音世界の中で、穏やかに浮遊しながらわずかな切なさをにじませる。アルバム全体の豊かさを象徴する一曲であり、過去と現在、個と環境が溶け合うような余韻を残す。
アルバム『Cloud Time』は、パンデミックによる2度のキャンセルを経て遂に実現した2024年の日本ツアーの録音を基盤としている。ツアー中にステージ・レコーダーへアーカイブされた8時間以上の音源から抜粋し、最小限の編集と追加ミックスで構成された7曲の長編アンビエント作品を収録。即興演奏によるそのサウンドは、都市から都市へと移動する中で変化する空間のエネルギーを捉え、環境と本能が交錯する音のドキュメントとして結実した。
スプレイグは当時をこう振り返る。
「日本への旅は、何かを持ち込むというよりも、新しい場所に自分を開いていくことでした。即興は常に私の音楽の核であり、この国と人々、空間との出会いを通して音が生まれていったのです。」
アルバムに収められた「Tokyo」「Nagoya」「Matsumoto」といった楽曲は、各地の空気や時間の流れを内包し、聴く者を“今”という瞬間の深みに静かに誘う。ポーリン・オリヴェロスの“ディープ・リスニング”にも通じる精神性を宿し、スプレイグのシンセサイザーが描き出す豊かな倍音は、聴き手自身の感情を投影する鏡のように機能する。
『Cloud Time』は、時間や記憶、空間のエネルギーと響き合いながら、“いま、ここに在る”という感覚を再発見させる作品である。Emily A. Spragueが紡ぐ音の旅は、過ぎゆく瞬間を永遠の断片として刻み込む、静謐なるアンビエント・ジャーナルである。

リリース情報
Emily A. Sprague|Each Story
Label:PLANCHA / RVNG Intl.
Format:Digital Single
配信中:https://orcd.co/vxq8d2
Official Visual – Created by V Haddad
Emily A. Sprague|Cloud Time
Release Date:2025年10月10日
Label:PLANCHA / RVNG Intl.
Format:CD(日本盤独自仕様)/Digital
Price:2,200円+税
Tracklist:Tokyo 1 / Osaka / Nagoya / Matsumoto / Hokkaido / Tokyo 2 / Each Story