「非合理の喜び」をめくるレコード案内──書籍『みののミュージック』が6月9日=ロックの日に刊行

登録者数およそ50万人を誇る人気YouTubeチャンネル「みのミュージック」で知られる音楽クリエイター・みのによる書籍『みののミュージック』が、2025年6月9日(ロックの日)に株式会社ビターズより刊行される。本書は、みのが長年にわたり蒐集してきたレコード・コレクションから、「100年先も聴き継がれるべき私的名盤」をテーマにセレクトした700枚超のレコードを紹介する、新たな切り口のディスクガイドである。

みのは、自身のYouTube活動を通じて、世代やジャンルを超えてポピュラー音楽の奥深い魅力を発信し続けてきた。リスナーとして、そして音楽を作る側としての視点を併せ持つ彼だからこそ可能となった、愛と実感に満ちたレコード論が本書には詰まっている。

本書の判型は、アナログの7インチ盤と同サイズの180×180mm。オールカラーで展開される誌面には、彼の音楽人生を彩った記憶とともに、ビートルズ、ザ・ローリング・ストーンズ、フィル・スペクター、ブライアン・ウィルソンらの海外アーティストから、はっぴいえんど、サザンオールスターズ、小泉今日子、近田春夫など日本の音楽シーンを語るうえで欠かせない存在まで幅広く登場する。

「レコードで音楽を聴く」という行為の意味

本書の冒頭には、レコードというメディアの不便さをあえて肯定する、みのによる力強い言葉が綴られている。手間がかかり、場所もとり、決して効率的ではない。だが、だからこそレコードには、音楽体験における「非合理な豊かさ」が宿るのだと、彼は語る。

ジャケットを眺め、歌詞カードに目を走らせ、針を落として音に没入する時間 ── そのすべてが、ストリーミング世代が忘れかけた「音楽に触れるための儀式」として、静かな存在感を放っている。

さらに本書では、モノラル盤による再生の奥深さや、かつて誰かが残したジャケットの書き込みにまで目を向ける。音だけでなく、その物理的な「記録物」としてのレコードの魅力が、丁寧に掘り下げられていく。

サウンドを「暗記」して初めて好きと言える

みのは、ある音楽を本当に「好き」と言えるようになるには、頭の中でサウンドを再現できるほどまで聴き込まねばならない、と述べる。その発言からは、単なる趣味を超えた、音楽への強い献身がうかがえる。

たとえば、ブライアン・ウィルソンが築いた音の迷宮『ペット・サウンズ』に対しても、すぐには魅力を掴めなかったと告白する。複雑なアレンジや構造を咀嚼し、自らの中にインストールするまでに時間を要したというその姿勢こそが、彼のレコード選びの眼差しに信頼をもたらしている。

自作自演とコンセプト・アルバムの交差点

邦楽の章では、1970年代のロックにおいて「サステナブルな音楽活動モデル」を築いたサザンオールスターズの存在が特筆される。“ポップで良質な楽曲”を核にしつつも、その枠内で実験を続けてきた彼らの方法論を、みのは「桑田佳祐モデル」と呼ぶ。

また、女性シンガー小泉今日子の「Fade Out」では、言葉ではなく楽器が物語を完結させる構成を指摘し、セクシャルな情景描写をギターやサックスの演奏に託すという古典的かつ洗練された手法にも光を当てる。

「みのミュージック」の集大成にして、新たな入口

本書は、音楽マニアによる偏愛の記録であると同時に、初めてレコードに触れるリスナーへの道しるべともなる。モータウンやブリティッシュ・インヴェイジョンといった黄金期の音楽だけでなく、日本の民謡やレア・グルーヴ、シティ・ポップに至るまで、ジャンル横断的に編まれた選盤は、音楽史をめぐる旅そのものだ。

タイトル通り、これは「みのの音楽」そのものであり、彼の人生と感情がレコードの溝に刻まれている。そこには、ただの“好きなレコード”では終わらない、100年先に託された音楽への敬意が息づいている。

刊行は6月9日=ロックの日。BITTERSオンラインストアにて購入すると、特典としてレコード帯デザインのオリジナルしおりが数量限定で付属する。

目次

『みののミュージック』

著者:みの(みのミュージック)
発売日:2025年6月9日
判型:180×180mm(7インチレコードサイズ)/オールカラー
発行:株式会社ビターズ

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