
VETHELの特集企画「音楽と〇〇」は、音楽と寄り添うさまざまなサブカルチャーとの交わりを探るインタビューシリーズ。〇〇はアートやゲーム、漫画、映画、ガジェット、建築、グルメ、旅行、乗り物、スポーツ、アウトドア……など何でもあり。音楽とその界隈の関係を語っていただきます。今回のゲストは?
嵐の夜に現れた女性のシルエット、仙台で体験した不可解な出来事、そして東尋坊で感じた「これ以上進んではならない」という強烈な直感 ── 数々の心霊体験を経てきたソガミチユキ氏は、自らを「霊を引き寄せる体質」と語る。その背景には、ご先祖が寺の住職であったという由縁もあるという。本インタビューでは、そんなソガ氏に「心霊」と「音楽」という一見交わらない二つの領域を結びつける視点について語ってもらった。霊はなぜ寄ってくるのか? 彼らに“好きな音楽”はあるのか? そして「心霊フェス」を開くならどんな形になるのか? オカルト好きならずとも引き込まれる話の数々をお届けする。

「嵐の夜、窓に浮かんだ女性のシルエット」──原点となった心霊体験
VETHEL そもそも、幽霊と出会ったのはいつぐらいなんですか?
ソガ 中2です。今でも覚えていて、ベタベタな話になりますけど(笑)、その日は嵐だったんですよ。うちのベッドの横が全部窓で、カーテンは閉めてたわけ。バチ!バチ!バチ!って窓にすごい雨が当たって、雷も鳴っていて、寝れなくて……そしたらバーっと部屋全体が明るくなるくらいに光って、パッと外を見たら人がいたんですよ。カーテンに映し出された女性のシルエット。明確に女性だったんですけど「うわー!」ってなって、それが最初。そこからいろいろいろいろあったんですけど。

VETHEL その後もいろいろ?
ソガ 23歳くらいのとき、サラリーマンで転勤して仙台に住んでたんですよ。東北ってそっち系が強いエリアじゃないですか。元々自分は霊感あるって分かってたんで、そのときも嫌だな〜と思いながら住んでたんです。そしたら自分の体調が悪くなったり、周りでも変な事故が起き始めたりして、これはまずいなって思って、霊媒師を呼んだんですよ。そのときは修験者みたいな人が来て、1時間くらいかけて払ってくれました。で、その人に「久しぶりだよ、こんなの」「なかなかだな、お前、すごいのいたぞ」って言われて。一旦は払ったけどまた来るぞ、と。で、「お前のご先祖が寺の住職だった。その力を引き継いでる。だから霊が寄ってくる。でも残念ながらお前は、除霊の力は引き継いでない」と(笑)。だから成仏したくて霊が寄ってくるけど全然成仏できない。で、周りにちょっかいをかけ始めるわけなんです。
なぜ僕がこういう体質なのか? なるほどってなる話がそのとき聞けたんです。コウドウ和尚という名前に心当たりはないかと。僕は出生の経緯がちょっと複雑で、詳しいことはよく分からないんですけど、祖母から「お寺で名前をつけられた」と聞いたことをふと思い出して、「コウドウ和尚ってどんな人なんですか?」って聞いたんです。すると、名前は「行道」でコウドウ。僕の名前は「道行」で、ああ、この人(霊媒師)の言ってることはホントなんだな、と納得したんです。その時点では、曽我って名前しか言ってなかったので、僕のこの体質は行道和尚から話がつながっていたのかもしれません。これは、僕の人生で3回行った除霊のうちの1回目の話です。この出来事をきっかけに、霊との関わりが始まりました。

東尋坊の直感と危機一髪の体験
VETHEL これまで一番ゾクッとした心霊エピソードってなんですか?
ソガ 表現が難しいんですけど、「怖い」っていうより「危ないか、そうじゃないか」の二択なんです。霊がいるのは理由があるからで、僕からするとそこにいるのは自然なんです。だから判断基準は「危害を及ぼすかどうか」。ゾクッとはないんですけどね。でも若い頃でいえば、福井県の東尋坊ですね。20代の頃に仲間と行ったんです。仕事が終わって夜、車で行って、すごく天気良かったのに、仲見世通りを抜けた瞬間、ドバーッて大雨。友達は「すげえな」で済ませてたけど、僕は「これは引き返そう」って。その雨はその先には行ってはいけないという合図だったんです。結果、僕が車の中で具合悪くなって……女性の例を引き連れてきちゃったんですよね。あれは危なかったなって思います。あと中学の頃、ベッドで金縛りに遭って、あーまたかーと思ってたら、足首を掴まれて、そのまま引っ張られたんです。枕がどんどん上がって「これはまずい」って思って動いたら、ベッドから膝まで全部落ちてて。あれもやばかったですね。

VETHEL 心霊体験を音楽に置き換えるなら?
ソガ 一般的には冷たい音楽ってイメージされると思うんですけど、いろんな霊がいるから、必ずしもそうじゃない。楽しい霊もいます。ホラー映画のBGMみたいなのは演出でしかないですね。
VETHEL 幽霊は静かなクラシックが好きなんですか? それとも爆音ロック?
ソガ そういうわけで霊によります。生きていたときに何が好きだったかで決まる。ロックが好きならロック寄りになるし、クラシックならクラシック。必ずしも怖い音楽じゃないと思ってます。
目に見えないものに対してエネルギーの向きや熱量を考える
VETHEL 音楽の現場で「ここはヤバい」と思った場所は?
ソガ 正確に言うと、霊が関係するのは「箱」じゃなくて、その土地なんですよね。土地自体に何かあったりすると、自縛霊がついていたりしますし、「霊道」っていう、霊が通る道があるんです。霊道はこの世とあの世をつなぐ道なんですけど、そこに霊が乗っかっていると心霊現象が起きやすくなるんです。だから、箱よりも土地のほうが重要なんですよね。あと水回りもよく言われますよね。沼とか湖とか、そういう水辺の場所は霊がよりやすいと言われていて、あまり良い場所とはされていない。

VETHEL よく店子が変わるお店ってありますよね? 何をやっても繁盛しないし、続かない店。
ソガ ありますあります。そういうのって、よく風水がどうとか言いますよね。正直、僕は風水自体よく分からないですけど、霊的なものと似ている部分があると思うんです。ジャンルとして結構近い。風水も霊的なものも、要は波動とか、気の流れとか、目に見えないものに対してエネルギーの向きとか熱量を考えるところがあります。だから、ジャンルや考え方としては似てるんだと思います。
もちろん、曰く付きの物件とか霊道みたいな話ならわかるんですけど、大体の場合は土地自体の問題が大きいですね。先祖代々の話とか、処刑場だった場所とか、知られざるお墓を壊して建てられた建物とか、必ず何か土地に由来するものがあります。でも、それが隠されていると、外からはわからないんですよね。
音楽と心霊──共鳴する周波数と“心霊フェス”の構想
VETHEL 心霊と音楽をテーマにフェスをやるなら?
ソガ 実際のイメージとしては、ピクサー・アニメーション・スタジオ製作、ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ配給の『リメンバー・ミー』みたいな感じですね。家族の絆と記憶の大切さを、音楽とメキシコの死者の日を通して描いた感動のアニメ映画なんですけど、死者のお祭りみたいな雰囲気で、音楽もそれに合った軽いノリなんです。他の霊も楽しもうぜっていう感覚なのかな。音楽を通して分かり合えることもあると思います。
ちょっと難しい話になるんですけど、霊って周波数の話があって、周波数が合うと、霊が見えるというか、可視化できるんです。いわゆる13チャンネルとか言われてるもので。音楽的なものでも、同じような周波数の合う瞬間があって、そういうイベントになると思います。これはぜひやってみたいなですね。
VETHEL もし幽霊にインタビューできるなら?
ソガ 人によりますね。「なんでそこにいるんですか」とか「なんでその格好なんですか」とか。霊って原則的に軍服着てたりライダースーツだったり、その人が亡くなったときの姿で現れるんです。僕は気配を感じるタイプで、直視はできないですけど。
僕って霊を引き寄せちゃうんで、必ず周りに何かいるんですよ。今も100人くらいいます(笑)。今思うと、特に20代の頃がそうでしたね。だから不思議なことに、20代の写真ってほとんど残ってないんです。あのころが霊力のピークで、溢れすぎて周りに写っちゃうんですよ。だから写真を撮られると、必ず何かが写り込んでしまう。僕が撮ると、何かが映ってるんです。当時は今みたいにスマホの時代じゃなくて、「写ルンです」とかフィルムカメラの時代でした。だから今みたいに気軽に写真を残す感じじゃなかったんですけど、それにしても20代の写真って本当に少ないんですよね。
VETHEL 心霊現象が起きるとき、音って何か感じますか?
ソガ 音はないですね。僕の場合は“空間の歪み”。うまく言えないんですけど、その空間だけ歪んでるんですよ。そこに霊がいると、雰囲気が淀んでいたり、空気が循環していないように感じるんです。わかりやすい例でいうと、その場所だけ気温が2度くらい下がっていたり、はっきり変化があるんですよね。
だから僕の場合は、音が鳴るとか、音が割れるとか、そういう体験はあまりなくて。どちらかというと、空間そのものが歪んでいるように見えたり、雰囲気が違う、そういう感覚なんです。人によっては音として感じることもあるのかもしれないですけど、僕はあまりないですね。
VETHEL 幽霊に推し曲があるとしたら?
ソガ それぞれですね。生前好きだった音楽だと思います。
VETHEL 音楽と心霊の共通点は?
ソガ 人を魅了して離さない力。コントロールできないのが面白さ。
VETHEL 最後に、幽霊が読者にメッセージを残すとしたら?
ソガ 未練が強い霊が多いんですよ。家族への執着とか、そこに留まり続ける思い ── 例えば「娘の成長を見たい」とか、そういうのが割合としてかなり多い。だから僕はよく「やりたいことをやれ」「後悔しないで生きろ」「今日死んでも悔いがないように」っていう話をするんです。要するに、オレみたいになるなよっていうメッセージですね。
VETHEL それではこの後アーティスト写真の撮影を……
ソガ ダメダメ! いろいろ写っちゃうから(笑)!

Interview & Text : VETHEL