
VETHELの音声連動コンテンツ「Something Essential for Your Life」。第一回のテーマは「もしあなたの人生が映画だとしたら、サウンドトラックに絶対必要な曲は?」。それぞれの瞬間で監督(ゲストご自身)はどんな曲をかけ、どんなドラマチックなストーリーにし、一本の映画になるのか……そんな架空のサウンドトラックをじっくりと考えてきていただきました。今回のゲストはクリエイターの夢魅たぴさんです。

幅広いジャンルの楽曲を制作しており、その作品は心に馴染むメロディが特徴で、多くのリスナーから支持を得ている。https://x.com/watashiwasaikyo
VETHEL 今回のゲストは作詞作曲編曲のクリエイター、夢魅たぴさんです。早速行きましょう。自分が生まれたときのシーンはどんな曲を流しますか?
夢魅たぴ ラヴェルの「ボレロ」がいいなと思って。
VETHEL 渋い。
夢魅たぴ 曲調的に最初にスネアの小さいところから入って、そこからカタルシスというか、最後一気にバーンとなって終わるんですけど、人生をまずテーマとして提起する感じで、最初にあったらかっこいいかなと思って。
VETHEL 「ボレロ」の曲で言うと、どこら辺で生まれるイメージですか?
夢魅たぴ 生まれるのは最初のあのテーマが入ってくるあたり、あのメロディが入ってくるあたり。割とすぐなんですけど、そこから始まる。
VETHEL では次に実際に初めて自分から耳にした曲は?
夢魅たぴ 僕は一番最初に自分から聴こうって思ったのが、小学生ぐらいなんですけど、スーパー戦隊の当時のものから、昔の昭和のものまで入ったベストアルバムです。親とレンタルショップに行ってCDを借りてMDに入れて、それを車で聴いたり、家で聴いたり、よくしてましたね。
VETHEL 小学校、中学校、高校を表すテーマソングは?
夢魅たぴ 小中高といろいろなことがあったんですけど、割と一貫して小中高に近いなって思っているものが、ボカロPのNeruさんの「い~やい~やい~や」。その曲はABメロは自分のことを皮肉ってる ── “何もできない自分、駄目だな”みたいなことを言ってるんですけど、サビでは“そんなのどうでもいいや”みたいな感じで、割と脳天気に表してるっていう曲なんです。僕も学生時代に何か起こしてやりたい!って、いろいろ思っていたんです。まだそのときは音楽をやろうってはっきり思ってなくて。それでもこの世に何かを残したいなぁっていう気持ちはあって、いろいろな職業を目指してはいて、そのときの自分にすごく合ってるなって曲でしたね。
VETHEL これまでやってしまった最大の失敗をしたときの曲は?
夢魅たぴ 最大の失敗というシチュエーション的には、ショパンの「幻想即興曲」。暗いところからドーンって始まる曲なんですけど、僕は学生時代にクラシックがメインの音楽大学に通ってまして、そのときにピアノ科の皆さんが弾いてるので、よく聴いてて、この質問を聞いたときにパッと思いついた曲で、すごくイメージに合う曲ですね。
VETHEL ちなみに、その、これまでやってしまった最大の失敗は?
夢魅たぴ 最大の失敗は、高校のときに音楽やっていこうって目指して大学に入ったんですけど、音大って音楽を目指す人はもちろん多いんですけど、学校の教員免許を取るという人も多くて、うちも取れる学校で僕も一応保険で取っておこうかなと思ってたんです。あるとき学長の授業があったんですが、その学長と揉めちゃって、そのとき僕も尖ってて(笑)、こんな人に教わるくらいなら、教師にならなくていいやって保険を捨てたっていうのですかね。今思えば取っとけばよかったなって思います(笑)。
VETHEL 逆にこれまでやり遂げた最大の成功のときにかけたい曲は?
夢魅たぴ 成功といえば、やっぱりベートーヴェンの「第九」。第四楽章で歌がメインで入ってくる、皆さん知ってる曲だと思うんですけど、「歓喜の歌」っていうだけあって、僕のイメージには合う。大学のときもオーケストラで歌で参加したり、そういう経験もあったので、歌のイメージにはぴったりだなって思いました。
VETHEL 今すぐ聴きたい曲はなんでしょう?
夢魅たぴ 僕はアニメが好きで、人生で一番好きなアニメが『戦姫絶唱シンフォギアGX』で、その中の有名な曲「虹色のフリューゲル」。普段の通勤でも行き帰りに聴いたりする曲ですけど、たまにパッと聴きたくなる瞬間があって。こういうときにって決まってないんですけど、急に無性に聴きたくなる曲がこれですね。
VETHEL 人生で最も耳にした曲は何でしょう?
夢魅たぴ 耳にしたというと……昔、大学や高校のときにコピーバンドやってたんですけど、ドラム担当でSILENT SIRENのコピーをやってたんです。学校に入ってばかりのころで一番最初に「八月の夜」っていう曲をやって、いっぱい練習しなきゃ、何回も聴かなきゃっていうので、そのとき一番聴いていた、人生の中でも一番聴いたのが、「八月の夜」ですね。
VETHEL 大事な人にあげたい1曲は何でしょう?
夢魅たぴ キタニタツヤさんの「私が明日死ぬなら」っていう曲があって、ざっくり言うと、“死にたいときもあるけれど、いろんな希望もあるよ”みたいなイメージの曲なんです。ネガティブな人への曲だと思うんですけど、僕もやっぱり昔そういう気持ちになったころもあったので、そういう気持ちになった人に、この曲を聴いてポジティブになってほしいなっていうのは思いますね。
VETHEL 映画のエンディング=死ぬときにはどんな曲が流れているでしょう?
夢魅たぴ 死ぬときは最後は自分の生涯で一番売れた曲を流してほしいなって思うんです(笑)。それ以外で言うと、じんさんっていうボカロPの「チルドレンレコード」という曲。僕、ボーカロイドを主に使って作曲してるんですけど、それを使ってやっていこうっていうきっかけになった曲なんです。初めて聴いたときに全身に衝撃が走って、音楽ってここまでやっていいんだ!とか、こんなものを使ってこんなことまでいろいろできるんだ!とか、一気に実感した曲だったので、これを最後に流したいと思います。
VETHEL ちなみに自分の売れた曲とおっしゃってましたけど、明日死ぬとしてどんな曲が流れますか?
夢魅たぴ 僕の中でいろいろな作曲のお仕事につながったり、たくさん聴いてもらったのが、「妄想アクトレス」。その曲では自分がいつも組ませてもらっているバンドのギター、ベースの方に演奏で入ってもらったり。あとは大学のときに吹奏楽もやってたので、そのつながりでトランペットやサックス、僕の周りのいろんな人を集めて、そのときの集大成という感じで出した曲なんです。それが一番聴いてもらえて、しかも渋谷の大きなビジョンでMVが流れたりしたし、そういう意味では「妄想アククトレス」になりますね。
VETHEL 映画の最後、エンドロールにはどんな曲を流しますか?
夢魅たぴ 選んだのは「Dive to Blue」。 アイマリンプロジェクトっていうアーティストなんですけど、作曲が玉屋2060%さん。Wiennersっていうバンドやってたり、でんぱ組.incの曲を書いてたり、最近もいろいろなアイドル曲を作られてるんです。作曲家の中でもいろいろ尊敬する方がいらっしゃいますけど、そのうちのひとりで、自分のやりたいバンドも自分自身のサウンドも出しつつ、アイドルさんとか、いろいろな方への強みを生かした楽曲を制作されるんです。その中で最後のエンディングには、この大好きな「Dive to Blue」を流したいなと思いました。

INTERVIEW & TEXT : VETHEL