
VETHELの音声連動コンテンツ「Something Essential for Your Life」。第一回のテーマは「もしあなたの人生が映画だとしたら、サウンドトラックに絶対必要な曲は?」。それぞれの瞬間で監督(ゲストご自身)はどんな曲をかけ、どんなドラマチックなストーリーにし、一本の映画になるのか……そんな架空のサウンドトラックをじっくりと考えてきていただきました。さて、本日のゲストはクリエイターのYUBAさんです。

VETHEL 今回の「Something Essential for Your Life」、前回に続いて「もしあなたの人生が映画だとしたら、サウンドトラックに絶対必要な曲は?」というテーマです。今回のゲストはクリエイターのYUBAさん。よろしくお願いします。まずはご自身の自己紹介から簡単にお願いします。
ユキヤ 作編曲をやらせていただいておりまして、YUBAという名義で活動させてもらってます。得意なジャンルがエレクトロミュージックやKAWAIIサウンドを特徴とした音楽をよく作っております。
VETHEL 早速行きましょう。まずは自分が生まれた時のシーンはどんな曲を流しますか?
ユキヤ 自分は2曲選ばせてもらいました。1曲目はSnail’s Houseさんの「Snailchan Adventure」という曲で、もう1曲がYuc’eさんの「MUDPIE」っていう曲。2曲とも共通しているのが、ちょっとゲームっぽい音楽っていうことで、自分の生まれたシーンで考えたんですけど、生まれたら人生が始まるじゃないですか? で、自分の人生ってちょっとゲームっぽさがあるなって思っていて。コンティニューはできないけど、チャレンジしたり、冒険したりみたいなっていうのを踏まえた上で、この2曲を選ばせていただきました。
VETHEL ゲームが始まる感じですか?
ユキヤ ゲームがスタートするような感じの曲で、8ビットだったり、ピコピコしてたりっていう音楽です。
VETHEL なるほど、そして実際に初めて自分から耳にした曲は?
ユキヤ ここでガラッと変わるんですけど。自分から音楽に触れて、耳にした曲っていう認識で選んだんですけど、DIR EN GREYの「朔-suku-」。もともと母が音楽を聴いてまして、その影響で自分も聴くようになったんですけど、当時の母はビジュアル系をよく聴いてたんです。YouTubeでビジュアル系って何だろう?と思って初めて調べて出てきたのが「朔-suku-」っていうMVで、これを小学校ぐらいで観てちょっとトラウマになってしまって……。
VETHEL その衝撃はかっこいいなのか、なんだこれ?みたいなのか。
ユキヤ 怖い……映像でゴキブリを踏み潰すシーンとかがあるんですよ。 その曲だけの情報になると、そこまで想像することも可能かもしれないんですけど、音楽っていろんな解釈があるじゃないですか? そこでゴキブリを踏み潰すっていう発想がすごい。自分の中で斬新で、音楽っていろんなものと組み合わさった結果、想定してない解釈が生まれますよね? 自分はそのときは怖いっていう感情になったんです。 未知の絵が出てきたというか……。
VETHEL じゃあ今もDIR EN GREYの「朔-suku-」を聴くと……
ユキヤ うわっと(笑)。当時が蘇りますね。
VETHEL 面白いですね。そして小学校、中学校、高校を表すテーマソングは?
ユキヤ これはスリップノットさんから「Eyeless」。 皆さん聴いたことあるかもしれないんですけど、今回はサントラっていうところで自分に置き換えてみて考えたんです。で、自分は小学校からメタラーで、やっぱり小学校、中学校、高校って、自由にはできるけど、年齢とかお金とかっていう制限があったりして、それ以上超えられない、もどかしさみたいなのを表現したい……。そうなったときに、当時のスリップノットのサウンド ━━ 自分をちょっと強く見せてるけど、これ以上いけないもどかしさを表現しているのがこの曲かなと思いましたね。
VETHEL これまでやってしまった最大の失敗をしたときの曲は?
ユキヤ Peripheryさんの「Make Total Destroy」という曲を選ばせていただきました。海外のバンドなんですけど、サウンドはメタル系で、自分がこれを聴いてたのが高校に入る前ぐらいの受験期ぐらい。で、自分は本当は行きたかった高校を蹴って1個下の学校にしたんですよ。すると周りから“なんでこの高校に行かなかったんだ!”って詰められたときがあって……そのころに友達からいい曲があるってお勧めされて聴いたのがこれ。当時、和訳してみたんですけど、新しい世界の話で、こう対応するとか、いろいろ壊して新しく作るみたいな歌詞を見たときに、この選択(行きたかった高校を蹴ったこと)は自分の中ではちょっとよくなかったかなっていう感情の中で聴いて。でもここから選んだ道を新しく切り開いて、自分として良いものにしてたらいいんじゃないかっていうきっかけがあった曲ですね。
VETHEL 逆にこれまでやり遂げた最大の成功をしたときの曲は?
ユキヤ はい、こちら、ポリフィアさんの「シャンパン」という曲を選ばせていただきました。 この曲はインストなんです。ギターがメロを奏でるようなインストバンドの曲で、この曲はさっきのやってしまった失敗の後の話。この曲も当時、高校ぐらいに発見して、そこで、やっぱり音楽を自分でもやってみたいなって思って、いろいろ試行錯誤してた結果、音楽好きな人たちが自分の周りに集まってきて、“すごいわ、自分、これからなんか面白いことあるんじゃないか?”ってなって。で、自分はそこで音楽をスタートする一段階の突破をしたっていう成功体験があって、すごく嬉しかったんです。で、この曲を聴いてもっと頑張りたい、そう奮い立たせてくれた曲でしたね。なのでこの曲はもうここしかない。
VETHEL 曲調はどんな感じの曲なんですか?
ユキヤ ロックなんですけど、メタルの要素がありつつも、早弾きやギターメインのインストバンドで、ちょっとテクニカルな曲ですね。
VETHEL そして、今すぐ聴きたい曲は?
ユキヤ こちらのMoe shopさんの「WWW」という曲を選ばせていただきました。こちらの曲は今までの選曲からガラッと変わった楽曲になるんですけど、この曲が初めてリリースされたときに、ちょうどMoe shopさんの作品ってすごくいいな、面白いなって思ってたところだったんです。 で、この楽曲を聴いて、“なんだ!このサウンドはどうやって作られているんだ⁉︎”って。ミックスや音の処理、すごいワイドで今までに聴いたことのない音の配置をされた曲だったので、すごく衝撃があって。 で、そこから自分の今の制作スタイルにも影響を受けるぐらいの曲になっていて、自分の今の楽曲制作のルーツの根本はこの曲にあります。
VETHEL それで人生で最も耳にした曲も……。
ユキヤ はい、同じです。音楽制作の仕事が多くなってくると、趣味で音楽を聴くという時間が少なくなってしまうんです。こういう楽曲のテイストで作ってくださいって、送られてきた資料の音楽を聴くことが多くなっちゃう。 そこで、何もない休日の朝の時間に何を流そうかな?って思ったときに、この曲に帰ってきてしまうんです。 もう一回この曲を聴きたいなって。
VETHEL じゃあ、これからも聴く?
ユキヤ いろいろな音楽を作ったり聴いたりするけど、何を聴こうかなというときはこれに戻ってきます。Spotifyって毎年再生数が出るじゃないですか? 毎年トップにいます(笑)。
VETHEL 次に大事な人にあげたい1曲は?
ユキヤ こちらはV.W.Pさんの「甘粒」という楽曲を選ばせていただきました。最近リリースされた曲なんですけど、大切な人にあげたい1曲っていうので考えたときに、誰の曲というよりは、自分が携わった曲を上げたいなって思って。この楽曲は自分がアレンジャーとして関わった楽曲でもあるんです。V.W.Pさんは5人のユニットなんですけど、そのうちの2人の派生曲で、歌詞もすごい。そのユニットの2人が休日に一緒に出かけるっていうお話で、その中で「コーヒーが飲めない。で、ヒールで背を増す」っていう歌詞が出てきます。お互いが相手に気を遣いながらもすごくラフな関係値で、一緒に休日を過ごして出かけるっていう曲で、このお題をいただいたときに、やっぱり大切な人にあげたいとなると、自分もこの歌詞の、お互いの気遣いというか、いい意味でちゃんと見てあげてる。でも、そこまで気を使わずに休日を一緒に過ごして、息抜きするっていうのを考えて、この曲を選ばせていただきました。
VETHEL では死ぬとき=エンディングにはどんな曲が流れていますか?
ユキヤ こちらも一択で、久石譲さんの「人生のメリーゴーランド」。 この曲は本当に大好きで、『ハウルの動く城』も毎回、金曜ロードショーとかでも観ちゃうぐらいズーッと観てきて、“人生のメリーゴーランド”っていうタイトルがすごく大好き。自分はオカルトは信じないタイプなんですけど、やっぱり前世があったり、人生って一瞬だけれども、また何周も繰り返して、その中で魂が入れ替わったり、肉体が入れ替わったりっていうので、死にはするけど、それが終わりではないっていうのを考えて、このタイトルもあり、自分の好きな楽曲でもありっていうところで、この楽曲を選ばせていただきました。
VETHEL それでは映画の最後、エンドロールにはどんな曲を流しますか?
ユキヤ またまたSnail’s Houseさんなんですけど、今回は「Pixel Galaxy」という楽曲を。選んだ理由は、自分が生まれたシーンでも同じアーティストさんの曲だったんですけど、自分が生まれたときの楽曲と最後の楽曲を、テイストを同じにしたいなって思いまして。「Pixel Galaxy」はインスト曲なんですけど、ストーリーがある映像が付いてまして。そこである日突然ちっちゃい女の子がちょっと仕事に疲れた人と出会うんです。で、そこで接していく中、その子が雲の上に帰ってしまう、元いた場所に帰るみたいなそういうシーンがあるんですけど、それを思って。仮に映画でこのエンドロールが流れてきたときに、この映画は終わるんだけど、また元の場所に戻るってことは、また違う解釈が得られるじゃないか。違う解釈をもう一回、2周目を観て考えてほしいっていう意味を込めてこの楽曲にしました。
VETHEL 素晴らしいですね。ありがとうございました。

INTERVIEW & TEXT : VETHEL