
VETHELの音声連動コンテンツ「Something Essential for Your Life」。第一回のテーマは「もしあなたの人生が映画だとしたら、サウンドトラックに絶対必要な曲は?」。それぞれの瞬間で監督(ゲストご自身)はどんな曲をかけ、どんなドラマチックなストーリーにし、一本の映画になるのか……そんな架空のサウンドトラックをじっくりと考えてきていただきました。本日のゲストはプロデューサー/クリエイターとして活躍中の古木良木(ふるきよき)さんです。

トラックメイキングを行う。FiLL’s 所属アーティスト・レッスン生の音楽活動における制作・活動すべてをバックアップする。https://x.com/poarlarecord
VETHEL 簡単に自己紹介をお願いします。
古木良木 トラックメーカーをしております。あとはアーティストのプロデュースだったり、ディレクションだったりを主に行っております古木と申します。よろしくお願いします。
VETHEL 早速「もしあなたの人生が映画だとしたら、サウンドトラックに絶対必要な曲は?」ということで、1つ目は自分が生まれたときのシーンはどんな曲を流しますか?
古木良木 ハンス・ジマーというアーティストの「You’re So Cool」。僕、すごく映画が好きで、これは『トゥルー・ロマンス』という映画のサウンドトラックなんです。クエンティン・タランティーノが脚本を書いてたり、トニー・スコットって『トップガン』の人が監督だったりする映画なんですけど、『トゥルー・ロマンス』のメインBGMみたいな曲で、木琴とかがなってるような、すごくポップな楽曲なんです。好きな映画の中でも3本指に入るぐらいな作品で、自分が生まれたときにどんな曲を流しますか?と言われて、最初にこの曲がパッと頭に思い浮かびました。
VETHEL 知らない体で聞きますけど、生まれた!って感じの曲ですか?
古木良木 テンテンテンテンって、ズーッとループされる、ちょっと不思議な曲なんです。で、タラティーノの作品って、結構バイオレンスの映画が多いじゃないですか? そこから激しいバイオレンスの描写になっていくような映画なんですけど、その……。
VETHEL ギャップというか、これから何か起こるぞ的な?
古木良木 そうです! えっ、どういうこと?みたいな感じの展開で。
VETHEL 次に実際に初めて自分から耳にした曲は?
古木良木 うちの親父がレコード好きで、かつ車の中でズーッとCDを流しているような環境で、ブラックミュージックやロック、特に洋楽が流れてました。で、親父の車で初めて聴いて記憶に残っているのが、レニー・クラヴィッツ「Rock And Roll Is Dead」。 あの印象的なギターで始まる曲。それを聴いて欲しくなって、初めてCDを買ったのがこれなんですよ。
VETHEL かっこいい!と思った?
古木良木 思いました。で、当時CDショップにオカンと行って、このリフだけは覚えてたので店員さんに聞こうと思ったけど、ちょっと恥ずかしいので、オカンに「この曲、買ってきて」と(笑)。 そうしたらオカンが当時出たばかりの『グレイティスト・ヒッツ』というベストアルバムを買ってきてくれて。 初めて買ってもらったCDですね。
VETHEL お母さんはなんで『グレイティスト・ヒッツ』を買ったんでしょう? それだったら全曲入ってるかな?みたいな。
古木良木 だと思います。店員さんには口でギターリフを伝えてすごく恥ずかしかったって言ってましたね(笑)。
VETHEL 次は小学校、中学校、高校を表すテーマソングは?
古木良木 これも本当にパッと出てきて。ここから急に日本のアーティストになるんですけど、僕、エレファントカシマシがすごく好きで、「Easy Go」って最近の曲なんです。エレカシにしては、めちゃくちゃメロコアでパンクなんですよ。 超高速ビートみたいな。それが僕の小中高というか、幼少期のイメージというか。今自分がこういうことをやってるのが不思議なんですけど、そのスピード感でいろいろあったなんていうのを思い起こすと、歌詞もピンと来るんです。エレカシはもちろん他の曲もすごい大好きなんですけど、パッと思い浮かんだのが、この「Easy Go」っていうめちゃくちゃ早くてアップテンポなノリノリな曲。
VETHEL これまでやってしまった最大の失敗をしたときの曲は?
古木良木 失敗は何個かたくさんありますけど、そんな失敗の中でも僕、アホほどポジティブなんですよ(笑)。で、もうすぐポジティブに変換しなくちゃいけないなと思うときに、ちょっと後押ししてくれるような曲がいいなと思って。これも日本のアーティストなんですけど、doaっていうアーティストの「英雄」。サビが「男なら誰かのために強くなれ」っていうすっげえ熱い歌詞なんです。失敗したときにはすっげえポジティブな曲を聞きたい。
VETHEL ちなみにそのやってしまった最大の失敗は話せますか?
古木良木 僕が中学校のときの話ですけど、男の子同士ですごく陰湿ないじめが流行ってて、いじめてたヤツが次にいじめられる。ズーッとそのループが繰り返されていて、確かそのときにそういうドラマもあったぐらい。で、最終的に自分が最後まで残っちゃったんですね。最後に40対1ぐらいな感じで、さっきまで仲良く遊んでいた友達もいないわけです。ある日、呼ばれて公園に行ったら、前にいじめてたヤツがズラーっといて、「うわー、これはもう終わったな」と。他にもたくさん失敗はあるんですけど、「男なら〜」っていう曲が出てきたっていう感じで今回選びました。
VETHEL 反対にこれまでやり遂げた最大の成功したときに流れ出る曲は?
古木良木 また映画に戻るんですけど、ビル・コンティの「Going The Distance」。『トゥルー・ロマンス』と並んで映画『ロッキー』がすごく好きで、その『ロッキー』で試合に勝ったときに“エイドリアーン!”って叫んでるときの、あの曲です。成功って、自分にはまだ大きいものはないと思っていて、ひとつ成功しても、もっと大きいものを求めたい ━━ そういう部分があったりするんですけど、その中で嬉しいときやパッと盛り上がりたいときに、その“エイドリアーン!”って叫んでる曲を流したい。映画自体もどちらかというと、ボクシングのシーンはあんまりないですけど、あのサクセスストーリーがすごく好きで、それをちょっと振り返るというか、そういうときに本当に聴きたくなりますね。。
VETHEL では、今すぐ聴きたい曲は?
古木良木 すぐ聴きたくなるような曲って、ちょっとテンション上げたくなったりとかするようなタイミングが多くて、そういうときには、どんぐりずっていう2人組のラッパーさんの「Let’s go」。テクノとかハウスとか、クラブ系のイケイケなサウンドに、ひたすら「Let’s go」って言ってる2分ぐらいの曲なんです。それを爆音で聞いてテンション上げるみたいな感じで、シンプルなんですけどすごく面白い曲。今すぐ何か聴きたいと思いついたときは、この曲を流しちゃいますね。
VETHEL 人生で最も耳にした曲は?
古木良木 僕もともとギターをやってたけど、ボーカルもやりたかったんです。 なんか歌を歌えたらいいなって思って。でも歌はそんなにうまくなかったので、ギターになったんですけど、それでもちょっと一回諦めきれなくて、ボーカルレッスンをしたときに、ひたすらこの曲だけうまく歌いたいなっていう曲があって、それがOriginal Loveの「接吻」。 この曲が一番大好きです。 日本の曲というか、すごく耳なじみもいいし、当時言われてた渋谷系じゃないですけど、田島貴男さんの声がすごく好きで、プラスちょっとストレートで分かりやすい。この曲が一番聴いてるかもしれない。
VETHEL これからも?
古木良木 一生聴きますね。違うバージョンも出てきてるので聴き続けます。
VETHEL 大事な人にあげたい1曲は?
古木良木 そろそろ結婚する奥様候補がいるので、大事な人=好きな人に当たるんですけど、ちょっと意外かもしれないけど、UVERworldの「美影意志」。お互いにバタバタしていて、奥さん候補の方もそういう感じなので、本当にシンプルで分かりやすい……照れくさくなるような歌詞なんですけど、UVERworldさんの曲がそういうすごくシンプルで分かりやすかったり、伝わりやすかったりする曲が多い中で、奥さん候補にオススメのプレイリストを作ったときに、この曲だけ唯一褒めてくれたんです(笑)。結構こわこわなもの。この流れでこわこわこわなものがすぐ多かったので、奥さん候補が唯一喜んでくれたのは、この「美影意志」でした。
VETHEL 死ぬとき、映画のエンディングですね。どんな曲が流れていますか?
古木良木 フランク・シナトラの「My Way」。これまたこっちに戻るんですけど。僕がこの曲を聴いたのが、岩井俊二監督でチャラ主演の映画『スワローテイル』。あの映画がすごく好きで、当時バンドもやってたし、ちょっと音楽の話も入ってくる 映画で、そのときに「My Way」をYEN TOWN BANDっていうのでカバーをしてて、それを聴いて、すごくいい曲だなと。 そのバージョンは女性ボーカルなので、そのときは元の曲って何だろうなって思ったのが高校生ぐらいのときなんです。
原曲のフランク・シナトラの「MyWay」を聴いたときには、めちゃくちゃ渋くて、かっこいいなって思いました。それこそ自分の道じゃないですよ、そういうふうに書いてるような歌詞を見て、すごくいいなと思って、自分が死ぬときに何が流れてたらいいいかなって考えたら、悲しくもない「My Way」が流れてたら、やっぱりこいつ音楽好きだったんだなあって、死んだ後も周りも聞いてくれるかなと思って。
VETHEL そして映画最後に流れるエンドロールにはどんな曲を流しますか?
古木良木 ウォーの「Why Can’t We Be Friends」。僕が映画を好きな理由が、親父がレコードと一緒にレーザーディスクを持ってたんですよ。その中に映画が4〜5作あったんです。で、唯一自分が何回も観てたのが、『リーサル・ウェポン4』なんです。『リーサル・ウェポン1』も『リーサル・ウェポン2』も、もちろん観たことあるんですけど、4はジェット・リーとかが出たりとかするような、最終作みたいな感じなんですけど、それはすごい観た記憶があります。その映画の終盤に、主人公の奥さんに子供が生まれるということで今までの登場人物が全員病院に集まって、今まで出てきたキャラクターが勢ぞろいするわけなんです。で、出産直前にドタバタしながら集合写真を撮る瞬間があって、そのときにこの曲が流れてくる。あなたたち誰ですか?って教会の神父に言われた瞬間に、僕たち家族です!みたいなことを言うんです。この曲の意味も、“なんで友達になれないの?”とか、当時の時代の背景が出てるような曲で、この曲がエンドロールで流れると、幼少期に観てた『リーサル・ウェポン4』が ━━ バリバリのアクション映画ですけど(笑)━━ 思い出すっていうので選びました。

INTERVIEW & TEXT : VETHEL