
ジャズは20世紀初頭のアメリカで誕生し、その後100年以上にわたり進化を続けてきた音楽である。ニューオーリンズの街角で生まれた即興演奏は、やがてスウィング時代のダンスミュージックへと発展し、ビバップによって知的な芸術へと昇華された。さらに、モード・ジャズやフリー・ジャズが新たな表現を切り拓き、フュージョンやスムース・ジャズが多様なリスナーへと広がっていった。
そして2000年代以降、ジャズはヒップホップやエレクトロニカ、ワールドミュージックと融合しながら、新たな時代を迎えている。ロバート・グラスパーやカマシ・ワシントンが現代ジャズを牽引し、UKジャズシーンではシャバカ・ハッチングスやアルファ・ミストが独自の進化を遂げている。
今もなお変化し続けるジャズ。その歴史を紐解きながら、音楽の魅力と未来を探っていこう。
スウィング時代(1930年代~1940年代)は、ジャズがアメリカの大衆文化の中心に躍り出た黄金期だ。この時代には、ビッグバンド・ジャズが隆盛を極め、多くの人々がダンスホールでそのリズムに身を任せた。以下では、スウィング時代の特徴と、主要なアーティストであるデューク・エリントン、カウント・ベイシー、ベニー・グッドマンについて詳しく解説し、各アーティストの代表的な楽曲を併せて紹介しよう。
スウィング時代の特徴
スウィング時代は、ジャズが大衆音楽として広く受け入れられた時期である。ビッグバンドと呼ばれる大編成のオーケストラが主流となり、トランペット、トロンボーン、サックス、ピアノ、ベース、ドラムスなど、多数の楽器が一体となって演奏した。この時代のジャズは、4ビートのリズムが特徴で、ダンス音楽としての側面が強調された。また、各楽器奏者が順番に即興演奏(ソロ・インプロヴィゼーション)を披露するスタイルも確立され、演奏の醍醐味となった。
デューク・エリントン
デューク・エリントンは、ジャズ史における最も重要な作曲家兼バンドリーダーのひとりだ。彼のオーケストラは、洗練されたアレンジメントと独自のサウンドで知られ、多くの名曲を生み出した。彼の代表曲のひとつである「It Don’t Mean a Thing (If It Ain’t Got That Swing)」は、スウィングの精神を象徴する楽曲として有名だ。この曲は、スウィング時代の到来を告げるものであり、そのタイトルが示す通り、「スウィングしなけりゃ意味がない」というメッセージが込められている。エリントンの音楽は、ジャズを芸術の域に高め、後のミュージシャンたちに多大な影響を与えた。
カウント・ベイシー
カウント・ベイシーは、シンプルでありながら力強いリズムと、洗練されたアンサンブルで知られるバンドリーダー兼ピアニスト。彼のオーケストラは、ブルースの要素を取り入れたスウィングで、多くのファンを魅了した。代表曲のひとつ「Swingin’ the Blues」は、彼のスタイルを象徴する楽曲。この曲では、ベイシー独特の軽快なピアノリフと、ホーンセクションの絶妙な掛け合いが楽しめる。彼の音楽はシンプルさとグルーヴ感を重視し、多くのダンサーたちを魅了した。
ベニー・グッドマン
ベニー・グッドマンは、「キング・オブ・スウィング」と称されるクラリネット奏者であり、バンドリーダーである。彼のバンドは、スウィング時代を代表する存在として、多くのヒット曲を生み出した。中でも「Sing, Sing, Sing」は、スウィングの代名詞とも言える名曲。この曲は、力強いドラムビートとクラリネットのメロディが特徴で、聴衆を熱狂させた。また1938年のカーネギーホールでのコンサートは、ジャズがクラシックの殿堂に進出した歴史的瞬間として知られている。
スウィング時代の影響
スウィング時代は、ジャズをアメリカの主流音楽として確立し、多くの人々にダンスと音楽の楽しさを提供した。またビッグバンドの編成やアレンジメントの手法は、後のポピュラー音楽にも大きな影響を与えている。デューク・エリントン、カウント・ベイシー、ベニー・グッドマンといったアーティストたちは、それぞれ独自のスタイルでスウィングを発展させ、ジャズの多様性と魅力を世界に示したのである。これらのアーティストの楽曲は、現在でも多くの人々に愛され、ジャズのスタンダードとして演奏されている。スウィング時代の音楽は、そのリズムとエネルギーで、今なお私たちを魅了し続けていると言えよう。

Jiro Soundwave:ジャンルレス化が進む音楽シーンにあえて抗い、ジャンルという「物差し」で音を捉え直す音楽ライター。90年代レイヴと民族音楽をこよなく愛し、月に一度は中古レコード店を巡礼。励ましのお便りは郵便で編集部まで