[連載:ROCKを学ぶ]2000年代以降のロック:再解釈と融合の進化

歪んだギターの音が鳴り響いた瞬間から、ロックはただの音楽ではなくなった。1950年代、ロックンロールという衝動が生まれ、若者たちの心に火をつけた。それは時代の波にもまれながら、怒りや希望、愛や絶望を叫び続けてきた。反逆の60年代、熱狂と混沌の70年代、華やかに咲き乱れた80年代、内省と葛藤の90年代 ━━ そして、新しい時代の荒野を駆け抜ける2000年代以降。ロックは形を変えても、その魂は今も燃え続けている。この音が鳴り止むことはない。時代とともに揺れ動いたロックの軌跡を、ここに辿ろう。


2000年代以降、ロックは多様な進化を遂げ、新たな解釈や他ジャンルとの融合を繰り返しながら発展してきた。グランジやオルタナティブ・ロックが90年代に頂点を迎えた後、ロックはシンプルなバンドサウンドの復活、エレクトロニカとの融合、さらにはヒップホップやポップとのクロスオーバーを通じて新たな表現を模索するようになった。この時代のロックは、一つのスタイルに収まることなく、多様なサウンドへと広がっていった。

2000年代初頭には、70年代のパンクやロックンロールの原点回帰を目指す「ガレージロック・リバイバル」が起こった。ザ・ストロークスやザ・ホワイト・ストライプス、ザ・リバティーンズなどのバンドが登場し、シンプルで荒々しいギターサウンドを再評価する動きが広まった。この流れは、80年代以降の過剰なプロダクションを排し、生々しい演奏や直感的な楽曲構成を重視するスタイルを復活させた。

ポストロックとインディーロック

同時に、ロックの可能性を広げる新たな動きとして「ポストロック」が台頭した。ボーカルを排し、楽器のみで音の世界を構築するこのジャンルは、シガー・ロスやモグワイ、ゴッドスピード・ユー!ブラック・エンペラーといったバンドによって確立された。ポストロックは、静寂と轟音の対比や、アンビエントやエレクトロニカとの融合を特徴とし、ロックの表現の幅を広げた。

2000年代後半には、インディーロックが主流となり、オーケストラ的なアレンジを取り入れたアーケイド・ファイア、鋭いリリックとギターリフで話題となったアークティック・モンキーズ、アフロポップの影響を受けたヴァンパイア・ウィークエンドなどが登場した。これらのバンドは、既存のロックの枠組みを超え、自由な発想で音楽を作ることで、ロックを新しい方向へと導いた。

エレクトロニカ、ダンスミュージックとの融合

一方で、ロックはエレクトロニカやダンスミュージックとの融合も進めていった。ミューズはヘヴィなギターリフとシンセサウンドを掛け合わせた壮大なロックを展開し、MGMTはサイケデリックとエレクトロの融合で独自の世界観を築いた。LCDサウンドシステムは、ロックとダンスミュージックの境界を曖昧にするエレクトロ・パンクを確立し、新たなロックの可能性を示した。

2010年代に入ると、ロックはさらに多様な音楽ジャンルと交差するようになった。マシン・ガン・ケリーのようにヒップホップからポップパンクへ転向するアーティストが現れ、XXXTentacionやリル・ピープは「エモ・ラップ」という新たなジャンルを生み出した。また、ブリング・ミー・ザ・ホライズンのようにメタルコアとポップ、エレクトロを融合させるバンドも登場し、ロックはかつてないほど多様なスタイルへと変貌を遂げている。

まとめ:ロックという言葉の定義が変化し生き続けている

2020年代のロックは、もはやギター、ベース、ドラムの伝統的なバンド編成にとらわれず、テクノロジーを活用しながらジャンルの枠を超えて進化を続けている。「ロック」という言葉の定義自体が変化し、かつてのような純粋なロックバンドの時代ではなくなったものの、ロックの精神は今も形を変えながら生き続けている。

Jiro Soundwave:ジャンルレス化が進む音楽シーンにあえて抗い、ジャンルという「物差し」で音を捉え直す音楽ライター。90年代レイヴと民族音楽をこよなく愛し、月に一度は中古レコード店を巡礼。励ましのお便りは郵便で編集部まで

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