
韓国を拠点に活動する音楽プロデューサー、JINex(ジネックス)が、ニューEP『동화(Fairy tale)』を2026年10月20日にリリースする。1990年代から2000年代初頭の韓国R&B/バラードが持つノスタルジックな情緒を現代に蘇らせた本作には、MRSHLL、JUE、Lil Summer、이제、Slowly、JINBO the SuperFreakという6人の個性豊かなアーティストが参加。愛の始まりからすれ違い、別れ、そして記憶まで、異なる視点から描かれる6つの物語が収められている。韓国語で「童話」を意味するタイトルには、もうひとつの意味である「同化」というテーマも込められており、異なる声と言語、音楽的背景がひとつに溶け合う作品となっている。
90年代韓国R&Bの切なさを、現代のサウンドで再構築
JINexが本作のインスピレーションとして掲げたのは、1990年代から2000年代初頭にかけて韓国の音楽シーンを彩ったR&Bとバラードだ。
Solid、イ・ギチャン、パク・ジョンヒョン、フィソンらが活躍した時代。アメリカのブラックミュージックから受け継いだグルーヴやハーモニーと、韓国語特有の響き、そして繊細な情緒表現が結びつき、独自のR&B文化が育まれていった。
JINexは、そうした音楽の持つ温かみや哀愁を、単なる懐古趣味として再現するのではなく、現代的なスロージャムやR&Bバラードとして再解釈している。
柔らかなコード進行、叙情的なメロディ、余白を生かしたゆったりとしたグルーヴ。そこに異なる個性を持つヴォーカリストたちの声が重なり、どこか懐かしく、それでいて新鮮なサウンドが生まれている。
注目すべきは、全6曲のピアノ、ベース、ドラム、シンセサイザーの演奏からアレンジ、ミキシングまで、すべてJINex自身が手がけていることだ。外部のセッションミュージシャンを起用せず、ヴォーカルのための空間だけを残してサウンドを構築。それぞれの歌い手が持つ個性を最大限に引き出すプロダクションが、本作の統一感を生み出している。
6人の歌声が描く、6つの異なる愛の物語
前作『ETERNAL』(2025年)が、愛の始まりから喪失、記憶、癒やしへと続くひとつの物語を描いた作品だったのに対し、『동화』では6曲それぞれが独立した愛の物語として展開される。
MRSHLLを迎えたオープニング曲「4ever」は、永遠に続く愛への願いを描く一曲。続くタイトル曲「동화」では、JUEの歌声を通じて、永遠を信じたい気持ちと、その確信を持てない心の揺らぎが表現される。
東京を拠点に活動するLil Summerが参加した「Last Night」では、日本語、英語、韓国語が自然に交差し、終わりを予感しながらも離れられない関係を描写。サブタイトル曲「어려운 사랑(難しい愛)」では、이제がすれ違う恋人への複雑な感情を歌い上げる。
Slowlyをフィーチャーした「곁(そば)」は、ただ大切な人の隣にいたいという静かな願いを表現。そしてラストを飾る「하루하루가」では、韓国R&Bシーンで長年活躍するJINBO the SuperFreakが、失われた愛と、その後に残された時間を描き出す。
永遠を願う愛、言葉にできない想い、終わらせられない関係、そして喪失。6つの楽曲は異なる物語でありながら、ひとつの感情の流れを持った作品として響き合っている。
「童話」と「同化」 ── タイトルに込められた二重の意味
EPタイトルの『동화』には、作品の世界観を象徴する言葉遊びが隠されている。
韓国語の「동화(ドンファ)」は「童話」を意味する一方、同じ発音を持つ「同化」という言葉にもつながる。異なる性質や背景を持つものが互いに影響し合い、やがてひとつになっていくこと。本作では、その二重の意味が音楽的なコンセプトとして機能している。
参加アーティストたちのバックグラウンドも実に多彩だ。
アメリカで生まれ育った韓国系シンガーのMRSHLL、東京を拠点に日本語と英語で活動するLil Summer、韓国R&Bシーンを長年支えてきたJINBO the SuperFreak、そして新たな世代として注目される이제やSlowly。それぞれ異なる言語や音楽的感性を持つアーティストが、JINexのサウンドを通じてひとつの作品に集まった。
異なる声が交わることで生まれる新しい響き。それは、かつてアメリカのR&Bと韓国のポピュラー音楽が融合し、独自の音楽文化を生み出した歴史とも重なる。
『동화』は、6つの愛の物語であると同時に、6つの異なる個性が出会うことで完成した音楽的な「同化」の記録でもあるのだ。
韓国R&Bの過去と未来をつなぐプロデューサー、JINex
JINexは、ヒップホップ、R&B、ソウル、ファンクを軸に活動する韓国の音楽プロデューサー。フォントデザイナーとしてのキャリアを経て音楽制作に本格的に取り組み、独自のサウンドを築き上げてきた。
これまでにRa.D、BUMKEY、イ・ギチャン、Horim、Summer Soul、The Deep、Mad Clown、チェ・イェナら、世代やジャンルを超えたアーティストとコラボレーションを展開。
2023年に発表したファーストアルバム『Butterfly』、2025年のセカンドアルバム『ETERNAL』を通じて、韓国R&Bの伝統を現代的な感覚で更新するプロデューサーとして評価を高めている。
『ETERNAL』は韓国の音楽メディアRhythmerが選ぶ「2025年の韓国R&B/ソウル・アルバム TOP10」に選出されたほか、2026年にはMelon Magazineの注目アーティストとしても紹介された。
日本でも2025年12月にディスクユニオンでリリースイベントとミニライブを開催するなど、活動の幅を広げている。
そんなJINexが新たに提示する『동화』は、これまで追求してきた韓国R&Bへの深い愛情を、より自由で開かれたコラボレーションへと発展させた作品だ。
愛の物語は、必ずしも幸せな結末を迎えるとは限らない。それでも人は、何度でも誰かを愛し、同じ物語を繰り返す。
かつて聴いたメロディが、何年経っても心の奥に残り続けるように。『동화』は、時代や言語を超えて受け継がれるR&Bの情緒と、人間の普遍的な感情を静かに結びつける一作となりそうだ。

RELEASE INFORMATION
JINex – 동화(Fairy tale)
リリース日:2026年10月20日
ジャンル:R&B / Soul / Ballad
TRACKLIST
- 4ever (Feat. MRSHLL)
- 동화 (Feat. 주애 / JUE) [Title Track]
- Last Night (Feat. Lil Summer)
- 어려운 사랑 (Feat. 이제) [Sub Title Track]
- 곁 (Feat. Slowly)
- 하루하루가 (Feat. JINBO the SuperFreak)
