明治創業の缶メーカーが音楽で魅せる新境地 ── 町工場の機械音がファンキーなトラックに変貌

創業119年、愛知の老舗缶メーカー・側島製罐(そばじませいかん)が、工場の“音”で世界に挑む。日本の町工場を音楽レーベルに見立てた異色のプロジェクト〈INDUSTRIAL JP〉とのコラボレーションにより、缶製造工場の金属音や機械音を素材としたテックトラック「SOBAJIMA CAN」をリリース。楽曲と映像を通じて、製造現場のリアルな美しさとクラフトマンシップを鮮やかに描き出している。

舞台となるのは、愛知県海部郡にある側島製罐の現場。熱を帯びた機械のリズム、職人の手さばき、金属が響く音 ── そうした“日常の音”をビートとして昇華したのは、国内外のレフトフィールド・シーンで活躍するプロデューサー・Guchon。ヴィジュアルとサウンドが融合する映像作品は、単なるプロモーションを超え、日本の製造業の美しさと誇りをカルチャーとして発信する一歩となっている。

工場の未来を音で照らす、製造業再発見の試み

「製造業の現場は、最高にクールな仕事である」。そう語るのは、側島製罐代表取締役の石川貴也。明治期の創業から119年、缶製造を担ってきた同社は、時代の変化とともに新たな表現手段を模索してきた。過去には自己申告制の報酬制度や、日経ニューオフィス賞を受賞したティール型オフィスの導入、さらにはドローンを用いた工場見学映像の制作など、常に「中小企業らしからぬ」挑戦を続けている。

しかし現在、製造業は深刻な人材不足に直面している。製造業就業者の割合はピーク時の27.6%から15.6%まで減少(総務省調査)、とくに中小企業では若手採用が困難を極めているという。そうした状況の中、側島製罐は「缶を作る」だけでなく、「can=可能性」を広げる存在でありたいと、今回の音楽プロジェクトに取り組んだ。

音で伝える現場のリアル ── “老舗×異彩”の化学反応

側島製罐内の“can推進課 ミュージック担当”によれば、町工場レーベルという発想は、自社の挑戦を一人でも多くの人に伝えたいという純粋な思いから始まったという。音や映像を通じて、普段は表に出ることのない職人たちの姿や現場の空気を感じてもらい、製造業という職業に新たな憧れを抱いてほしい ── それが、この試みに込められた願いである。

機械のリズムをビートに変え、工場の風景をアートに昇華する本作「SOBAJIMA CAN」は、まさに“老舗×異彩”のコラボレーションが生んだ文化的事件である。日本のものづくりが持つ魅力を、音楽という普遍的な言語を通じて世界に発信するこの試みは、今後の町工場の未来を照らす一筋の光になるかもしれない。


INFORMATION
▶︎ 楽曲&映像:側島製罐 × Guchon「SOBAJIMA CAN」
▶︎ 配信開始日:2025年5月9日(金)10:00〜
▶︎ YouTubeリンク:https://www.youtube.com/watch?v=-U4pSJaFr0E
▶︎ 側島製罐 公式サイト:https://sobajima.jp/
▶︎ INDUSTRIAL JP:https://idstr.jp/

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