音楽は、いま何が出来るのか?──ウォー・チャイルドによるチャリティ・アルバム『HELP(2)』

「どんな子どもも、戦争の一部であってはならない」

そのシンプルで、しかし重い言葉から始まるプロジェクトがある。ウォー・チャイルドによるチャリティ・アルバム『HELP(2)』は、1995年に制作された伝説的コンピレーション『HELP』の精神を現代へと引き継ぐ作品だ。世界各地で続く紛争の影響を受ける子どもたちを支援するため、世代もジャンルも越えたアーティストたちが再び結集した。

1995年『HELP』から30年──再び鳴らされる“集団的行動”

オリジナルの『HELP』は、ブライアン・イーノの主導のもと、オアシス、ブラー、レディオヘッド、ポーティスヘッドらが参加し、わずか1日で録音された。120万ポンド以上を集め、ボスニア紛争下の子どもたちを支援したその試みは、音楽史におけるひとつの決定的瞬間として語り継がれている。

しかし現在、世界で紛争の影響を受けている子どもの数は、当時の約2倍。5人に1人、実に5億2,000万人に達している。
だからこそ『HELP(2)』は、過去へのオマージュではなく、いま必要とされる“再起動”なのだ。

Abbey Roadで生まれた、いまの音楽

『HELP(2)』は、2025年11月の濃密な1週間、プロデューサーのジェームス・フォード指揮のもと、Abbey Road Studiosでレコーディングされた。即興性とコラボレーションを重視する制作スタイルは、1995年当時の精神を踏襲しながらも、現在の音楽シーンのリアルな温度を刻み込んでいる。

参加アーティストは、アークティック・モンキーズ、デーモン・アルバーン、ベス・ギボンズ、パルプ、サンファ、ビッグ・シーフ、ウェット・レッグ、フォンテインズD.C.、デペッシュ・モード、オリヴィア・ロドリゴら、まさに現在進行形の音楽地図を映し出す顔ぶれだ。

アークティック・モンキーズ「Opening Night」から始まる物語

アルバム発表にあわせ、1stシングルとしてアークティック・モンキーズsによる「Opening Night」がリリースされた。彼らはこの楽曲について、「War Childの活動を支援できることを誇りに思う。このレコードが、戦争の影響を受けた子どもたちの生活に前向きな変化をもたらすことを願っている」とコメントしている。

象徴的なタイトルが示す通り、この一曲は『HELP(2)』という物語の幕開けでもある。

「子どもたちによる、子どもたちのための作品」

本作のビジュアル面を統括したのは、映画『関心領域』で知られるアカデミー賞受賞監督ジョナサン・グレイザー。
彼とミカ・レヴィが掲げたコンセプトは、「子どもたちによる、子どもたちのための作品」だった。

カメラは子どもたちに託され、スタジオでのレコーディング風景から、ウクライナ、ガザ、イエメン、スーダンといった紛争地域で子どもたち自身が撮影した映像までが収められている。音楽と現実が断絶されることなく、一本の線で結びつく構成は、『HELP(2)』が単なる音源集ではないことを雄弁に物語っている。

音楽が「行動」になる瞬間

『HELP(2)』は、音楽業界がひとつの目的のもとに結束したとき、何が起こり得るのかを示す実例だ。このプロジェクトによる収益はすべてWar Child UKへ寄付され、紛争地域で暮らす子どもたちの保護、教育、メンタルヘルス支援に充てられる。

音楽は世界を直接変えられないかもしれない。
それでも、行動を生む力にはなり得る。
『HELP(2)』は、その事実を静かに、しかし力強く証明している。

リリース情報

War Childによるチャリティ・アルバム
V.A.『HELP(2)』
2026年3月6日(金)世界同時リリース
2CD(国内盤/解説書付)、2CD(輸入盤)、2LP、デジタル/ストリーミング

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