
言葉と音、映像的感覚が交差する二人の邂逅
詩やフィールドレコーディングを織り込みながら、言葉と音のあわいを探求してきたフェリシア・アトキンソン。一方、映像的な感覚とオーケストラルな響きを横断し、アンビエントの射程を拡張してきたクリスティーナ・ヴァンツォウ。長年にわたる友情で結ばれた二人が、RVNG Intl.のコラボレーション・シリーズ「Reflections」第3弾としてアルバム『Reflections Vol. 3: Water Poems』を4月10日にリリースする。
本作から、ファースト・シングル「Film Still / The Sea」と、そのミュージック・ビデオが公開された。
友情が儀式へと変わるとき──『Water Poems』の世界観
『Water Poems』でアトキンソンとVantzouは、長年育んできた関係性を、きわめて集中的で儀式的な創作へと昇華させている。スポークンワードによる環境的な語りと、オーケストラ的な想像力は支流のように流れ合い、海や空、石といった自然要素に根ざした夢幻的なサウンドスケープを生み出す。
エレクトロ・アコースティックな楽器、声、環境音が重なり合い、日常の親密さと、すべての生命が立ち現れる“海の神秘”のあいだにある、潜在意識の空間へと聴き手を導いていく。
先行シングル「Film Still / The Sea」が開く、水の時間感覚
アルバムの扉を開く「Film Still / The Sea」は、催眠的なピアノのモチーフによって、海の持つ独特の時間感覚へとリスナーを引き込む楽曲だ。抽象化されたギターやシンセサイザー、そして古代デルフォイで録音されたフィールドレコーディングが溶け合い、儀式的とも言える没入感を生み出している。
声は語るというより、水辺そのものに呼びかけるように響き、楽曲全体がひとつの“水の記憶”として立ち上がる。
Super 8が捉えた、記憶のような映像
「Film Still / The Sea」には、ナターシャ・ギアナラキ監督によるミュージック・ビデオが添えられている。ギリシャ・イドラ島の海岸線でSuper 8フィルムを用いて撮影された映像は、アルバム制作の拠点となったThe Old Carpet Factoryとその周辺風景を背景に、アトキンソンとヴァンツォウの姿を印象派的に捉える。
瞬間の中に生まれた記憶を掬い上げるような映像は、作品全体が持つ“映画的ドキュメント”としての側面を静かに強調している。
海をミューズに──人格としての自然との対話
2009年に出会った二人は断続的にコラボレーションを続け、2019年のパリ・フィルハーモニー公演を経て、本作の構想を本格化させた。現在、アトキンソンは英仏海峡沿岸、ヴァンツォウは地中海沿岸に暮らしており、海は自然と創作の中心的な存在となっていった。
アトキンソンは「海は単なる風景ではなく、一人の人格のような存在」だと語る。ヴァンツォウもまた、本作に流れる奉仕や儀式の感覚について、「水、空気、岩、宇宙といった生命の基本要素に仕える感覚が強くあった」と振り返る。
水の詩が呼びかけるもの
『Water Poems』では、声や息遣い、水的なテクスチャーが密接に絡み合い、生命を内側から支える“見えない流れ”に意識を向けさせる。「なぜ船は浮かぶのか」「なぜ人は夢を見るのか」といった問いは、詩的でありながら、私たちの身体感覚そのものに根ざしている。
なお本作の収益の一部は、ギリシャ地中海を対象とした海洋保全プログラム「Arion」に寄付される予定だ。音楽はここで、環境とのより深い関係性を呼び戻す行為としても機能している。
水の源へと立ち返るためのアンビエント作品
RVNG Intl.の「Reflections」シリーズ第3作として届けられる『Water Poems』は、静けさと知性を備えたアンビエント作品でありながら、どこか根源的で、動物的な感覚を呼び覚ます。過激な意見と環境破壊が渦巻く現在において、本作は私たちの注意を“源の源”へと引き戻す。
水のように、確かにそこにありながら、掴むことのできないものへ──。
『Water Poems』は、その流れに耳を澄ますための空間を静かに開いている。

Artist: Félicia Atkinson & Christina Vantzou
Title: Reflections Vol. 3: Water Poemsis
Label: PLANCHA / RVNG Intl.
Cat#: ARTPL-252
Format: CD / Digital
Release Date: 2026.04.10
Price(CD): 2,200 yen + tax
※日本独自CD化
※ボーナス・トラック4曲収録
※解説付き予定
