これは“宿泊記”ではない。昭和ラブホという文化遺産へのラブレター ── 20代女子がひとりで巡った205軒、その記録が一冊に

懐かしくて新しい、昭和ラブホという異界

昭和生まれにはノスタルジーを、平成・令和世代には未知のカルチャー体験を──。全国200軒を超える昭和ラブホテルを、20代の女性がたったひとりで巡り歩いた記録が、一冊の本として結実した。

株式会社二見書房より発売された『昭和ラブホへ、20代女子がひとりで巡った205軒』は、単なる珍スポット紹介ではない。高度経済成長期からバブルへと続く日本の欲望と美意識が詰め込まれた、極めて真剣な“文化遺産探訪記”だ。

43都道府県、205軒──個人探訪のスケールを超えた執念

著者・ゆななは、北海道から沖縄まで全国43都道府県を巡り、昭和ラブホテル205軒を実際に訪問。その過程で得た知見をSNSで発信し続けてきた。本書では、その中から厳選した50軒を、すべて本人撮影による写真とともに紹介している。

空間の湿度、ネオンの色味、ベッドの造形。どれもが「使われてきた歴史」を帯びた、現役の文化財だ。

内装で読み解く昭和ラブホ四大系統

本書のユニークさは、感覚的に語られがちな昭和ラブホを、きちんと“分類”している点にもある。内装は以下の4系統に整理される。

王道系
ギミック系
ゴージャス系
激シブ系

さらに、「回転ベッド」「馬車ベッド」「貝殻ベッド」といった“三大ベッド”の定義や系譜を掘り下げる考察は、もはや民俗学レベル。昭和ラブホを未来へ残すための、本気の研究がここにはある。

20代女子ひとり旅だからこそ生まれたリアル

「お姉さん、自殺じゃないですよね?」と声をかけられた衝撃の入室エピソード。
夜行バスで11時間かけ、交通費を削って取材を続けた裏話。

本書には、若い女性が単身でラブホを巡るからこそ遭遇した、生々しくもどこか可笑しいエピソードが満載だ。危うさと好奇心が隣り合う感覚も含めて、この記録は極めて現代的である。

回転ベッドからネオン管まで──昭和の技術と美学

フロント側から見たエアシューターの壮観な眺め。
回転ベッドを考案したレジェンドが語る誕生秘話。
職人の魂が宿るネオン管の輝き。

透明なバスタブ、スペースシャトル型のベッド、ホテル名入りマッチ、20分200円の超レトロ電マ──。
脇役に至るまで、昭和ラブホは徹底して“過剰”で、だからこそ愛おしい。

業界史と取材ノウハウまで網羅した記録性

1985年の新風営法施行によって激変したラブホ業界の実情や、オーナー取材を成功させるための信頼関係の築き方まで、本書は踏み込む。これは単なる体験談ではなく、後世に残すべき一次資料でもある。

巻末には205軒すべてのリストと一言コメントを収録。昭和ラブホという文化を、点ではなく“面”で捉えようとする姿勢が貫かれている。

昭和ラブホのために生きる──著者・ゆななという存在

著者・ゆななは、平成生まれの20代女性。昭和ラブホテルを単身で巡り、オーナーに積極的に取材を重ね、歴史と文化の掘り下げを続けてきた。夢は「ラブホ博物館」を作ること。

本人曰く、「昭和ラブホのために生きていると言っても過言ではありません」。その言葉どおり、本書はひとりの人生を賭けた偏愛の記録でもある。

書籍情報
タイトル:『昭和ラブホへ、20代女子がひとりで巡った205軒』
著者:ゆなな
判型:A5
ページ数:160ページ
価格:本体2,200円+税
発売日:2026年1月15日
ISBN:9784576251400

昭和ラブホは、もう消えゆく存在かもしれない。
だが、この本がある限り、その記憶と熱は、確かに未来へ手渡されていく。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

  • URLをコピーしました!