4分間の“制御された混沌”──幻の日本ジャズ《Christal Zone「Rai Rai」》が初の正規リイシュー

BBE〈J Jazz〉が掘り起こした、1971年プロモ盤の奇跡

BBE Musicが展開する〈J Jazz〉シリーズが、またしても驚くべき秘宝を世に送り出す。1971年にプロモ盤としてのみ制作され、長らく伝説として語られてきた Christal Zone「Rai Rai / Kanashiyana」 が、2026年1月16日、7インチ・シングルとして初の正規リイシューを迎える。

これは単なるレア盤復刻ではない。日本ジャズが“世界音楽”へと大胆に踏み出していた瞬間を封じ込めた、極めて異質で、極めて自由な記録だ。

琴、ジャズ、アルジェリアン・ライ──ジャンル不可能のサウンド

「Rai Rai」を一言で定義することはできない。ジャズ、日本民謡、フリー・インプロヴィゼーション、そして北アフリカのアルジェリアン・ライが、猛烈なポリリズムの中でせめぎ合う。

作曲・編曲を手がけたのは、琴奏者/作曲家の櫻井秀朗。伝統楽器の響きを前景化しながら、祝祭的で生々しいリズムを叩きつけるそのアプローチは、アヴァンギャルド・ジャズであり、同時に路上の音楽でもある。

祝福と混沌、制御と解放。そのすべてが、わずか数分に凝縮されている。

後の“J Jazz金字塔”へとつながる原点

本作に参加しているのは、のちに伝説的スピリチュアル・ジャズ作品『Tachibana Vol.1』(1975年)を残す相沢徹クァルテットの前身メンバーたち。ピアニストの相沢徹、森村哲也・恭一郎兄弟は、この時点ですでに既存のジャズ文法から逸脱した実験を始めていた。

名義は一度きりの Christal Zone。だがこの7インチには、日本ジャズが独自の進化を遂げていく“胎動”がはっきりと刻まれている。

偶然から生まれた伝説──録音の舞台裏

この録音が生まれた経緯もまた、音楽そのものと同じくらいドラマティックだ。櫻井の別荘で行われていたリハーサルを、たまたま耳にしたプロデューサー 村井邦彦が、その場で衝撃を受け、翌日にスタジオ録音を決定。

こうして完成した7インチは、Liberty Recordsからプロモ盤としてのみ制作され、市場にはほとんど流通しなかった。現在ではオリジナル盤が天文学的な価格で取引される、日本ジャズ屈指のレアアイテムとなっている。

古代と未来、日本と北アフリカをつなぐ一枚

今回のリイシューでは、オリジナルのアートワークとパッケージを忠実に再現。BBEらしい丁寧な仕事によって、この“幻の音楽遺産”が、ようやく正当な文脈で再評価される。

「Rai Rai」は、過去の珍品ではない。ルールを拒み、自分たちの感覚を信じた世代からのマニフェストであり、いま聴いてもなおラディカルな一枚だ。

作品情報

Christal Zone – Rai Rai / Kanashiyana
レーベル:BBE Music
フォーマット:7インチ・アナログ・シングル
発売日:2026年1月16日
ジャンル:Jazz / World Fusion

4分足らずで、世界地図を書き換える音。
J Jazzの奥深さを知るうえで、決して見逃せないリイシューである。

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