風景を越えて──ジュリアン・ラージ、新作『Scenes From Above』で描く“音の記憶”

世界最高峰ギタリストが放つ、2年ぶりの新章

現代ジャズ・ギターの頂点に立つジュリアン・ラージが、前作『Speak To Me』から約2年ぶりとなるニュー・アルバム『Scenes From Above(シーンズ・フロム・アバヴ)』を2026年1月23日にリリースする。今作では、ジョン・メデスキ(org, p)、ホルヘ・ローダー(b)、ケニー・ウォールセン(ds, perc)による新カルテット編成でレコーディングを敢行。プロデュースは前作に続き、アメリカーナ・シーンを代表するジョー・ヘンリーが手がけている。すでに先行シングル「Opal」が公開されており、リリカルで温かな旋律がアルバム全体の方向性を示唆している。

アメリカーナの地平から、ジャズの核心へ

『Scenes From Above』は、ジュリアンが追求してきた“アメリカ音楽の風景”をより広い文脈で再構築する作品である。ブルースやカリプソ、さらにはバルトークが影響を受けた東欧民謡など、民族音楽的要素が静かに息づく一方、ストレートアヘッドなジャズや即興の自由さも随所に覗く。とりわけ、ジョン・メデスキのオルガンとピアノが作品全体の彩りを大きく決定づけ、タイトル曲「Night Shade」や「Something More」では、ラージの繊細なフレーズと呼応するように豊かな音像を描き出している。

ラージは本作についてこう語っている。

「バンドの誰か一人を中心にするのではなく、全員が平等な関係の中で音楽を作りたかった。
それぞれの成長と対話が、曲そのものを導いてくれたんだ。」

プロデューサーのジョー・ヘンリーも「これは『Speak To Me II』ではない」と語る。前作の延長ではなく、より自由で開かれた音楽世界 ── 音が語り、風景を紡ぐ“その先”を目指した作品である。

20分で1曲を書く──“ライティング・スプリント”が生んだ閃光

アルバムの発端は、2024年の暮れにラージが取り組んだ“ライティング・スプリント”という作曲実験だった。「20分で1曲を書き上げる」という制限の中で生まれた楽曲「Storyville」が、今作の構想を決定づけたという。そこから約50曲の候補を経て絞り込まれた楽曲群は、今年初頭、サンフランシスコのSF JAZZで共演した現カルテットのメンバーとともに、わずか2日間で録音された。そのスピード感こそ、ラージが追求する“即興の真実”を体現している。

ジャズを超えて、“記憶の風景”を描く

アルバム全体を貫くのは、どこか懐かしくも新しい響き。アメリカの原風景にある「哀しみと希望」、そして音楽という共同体の力を、ラージは静かに描き出している。ギター・ヒーローとしての輝きと、作曲家としての深い内省。『Scenes From Above』は、その両面が見事に融合した作品である。

リリース情報

ジュリアン・ラージ『Scenes From Above(シーンズ・フロム・アバヴ)』
2026年1月23日発売|UCCQ-1228|SHM-CD|¥3,300(税込)
レーベル:Blue Note

収録曲:

  1. Opal
  2. Red Elm
  3. Talking Drum
  4. Havens
  5. Night Shade
  6. Solid Air
  7. Ocala
  8. Storyville
  9. Something More
  10. Aberdeen(日本盤限定ボーナス・トラック)

Personnel:
Julian Lage (g) / John Medeski (org, p) / Jorge Roeder (b) / Kenny Wollesen (ds, perc)
Producer: Joe Henry


来日公演情報

Julian Lage Solo: World’s Fair 10-year Anniversary Tour
2025年12月5日〜12月12日|全国6都市7公演
詳細:https://www.bluenote.co.jp/jp/lp/julian-lage-2025/


ジュリアン・ラージが描く“音の風景”は、いつも私たちの心の中にある。

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