逃げ場のない“気まずさ”が笑いと痛みを生む──『Shiva Baby シヴァ・ベイビー』、ついに日本公開決定

パパ活女子、お葬式で修羅場。極限の気まずさを描く傑作が上陸

第45回トロント国際映画祭正式出品作にして、アートハウス配信サービス「MUBI」で2021年度視聴数No.1を記録した話題作『Shiva Baby シヴァ・ベイビー』が、2026年2月27日より日本公開されることが決定した。
監督は『ボトムス ~最底で最強?な私たち~』(2023)で一躍注目を浴びたエマ・セリグマン。主演にはZ世代のカリスマ女優レイチェル・セノットを迎え、現代の若者が抱える“アイデンティティ崩壊の瞬間”を、息詰まるようなリアリティとブラックユーモアで描き出す。

お葬式で元カノとパパ活相手が鉢合わせ──地獄の数時間が始まる

大学卒業を間近に控えた主人公ダニエルは、誰が亡くなったのかも知らされぬまま親戚のお葬式(シヴァ)に参加する。
そこでは元カノのマヤが優秀な進路を称えられる一方で、ダニエルは親戚たちから進路や外見について不躾な質問を浴び、居場所を失っていく。
そんな中、数時間前まで“パパ活”相手だったマックスが妻と赤ん坊を連れて現れ、状況は最悪の修羅場へ。
ベーグルを握りしめたまま動けないダニエルの姿は、まるで現代社会の息苦しさそのもののように見える。

若き女性監督が描く、“自分らしさ”の崩壊と再構築

本作はセリグマン監督が25歳のときに手がけた長編デビュー作。ニューヨーク大学Tisch芸術学部での卒業制作短編をもとに、主演セノットの後押しを受けて長編化された。
監督自身のユダヤ人コミュニティでの体験をベースに、“家族と伝統、自立のあいだでもがく女性”をテーマとしている。

セリグマンは語る。

「この作品は、若い女性が“性的に認められること”でしか自己肯定感を保てないと信じたときに直面する苦い現実を描いています。シヴァ(葬式)は、愛と不安、伝統と逸脱が同居する究極の舞台。私たちはこの混沌のなかで初めて、自分の輪郭を見つけるのだと思います。」

その言葉通り、本作は“気まずさのシンフォニー”でありながら、ユーモアと自己再生の物語でもある。観客は笑いながら、いつしか自らの不安や孤独に直面するだろう。

ティザービジュアルが象徴する“虚ろな理想”

公開されたティザービジュアルには、ベーグルを手に微笑むダニエルの姿が描かれている。可憐なドレスに包まれながらも、焦点の合わない瞳が語るのは「理想の自分」と「現実」との乖離だ。メイン写真では、完璧な妻を前に呆然と立ち尽くすダニエルの姿が切り取られ、“逃げ場のない現実”という作品の核心を象徴している。

現代の“気まずさ”を映す鏡

『Shiva Baby シヴァ・ベイビー』は、SNS時代を生きる若者たちが抱える「他人からの視線」と「自己肯定」の矛盾を、独特のブラックユーモアと緊張感で描いた傑作である。監督が語るように、「この映画を観た若い女性たちが、“誰かが私たちを見てくれている”と感じてくれたら嬉しい」。その言葉は、今を生きるすべての人へ向けた小さな祈りのように響く。

『Shiva Baby シヴァ・ベイビー』
2026年2月27日(金)より、新宿武蔵野館・ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開
監督・脚本:エマ・セリグマン
出演:レイチェル・セノット、モリー・ゴードン、ダニー・デフェラーリ、ダイアナ・アグロン ほか
2020|アメリカ・カナダ|英語|78分|G|配給:SUNDAE

公式サイト:https://sundae-films.com/shiva-baby/
Instagram:sundae_films/X:shivababy_jp


“ぜんぜん大丈夫じゃない”私たちのリアルが、いまスクリーンで爆発する。

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