混沌を抱きしめる音 ── ヘイズ・ブラッドレイ、新作『Audience』が描く“心のダンスフロア”

映画音楽からダンスフロアへ、帰還のアルバム

ロサンゼルス拠点のプロデューサー/コンポーザー、ヘイズ・ブラッドレイが、最新アルバム『Audience』を StrataSonic Records よりリリースした。映画作品やファッションキャンペーンのスコアを手がけてきた彼だが、今作では原点であるクラブサウンドへと回帰。ブレイクビーツ、トリップホップ、アンビエントが有機的に絡み合う全14曲は、内省と高揚が同時に息づく、深いダンス音楽として結実している。

アートとしてのダンスミュージック

本作は、ビートレスなアンビエント作品を発表していた時期を経て、Bradleyが再び身体性を取り戻す過程の記録でもある。
メランコリックなコードワークと、アナログ感のあるブレイクビートが重なるサウンドは、懐かしさと未来性を同時に帯びたものだ。そこには、近年のUSツアーで同道したフレンチ・エレクトロニカの象徴 AIR からの影響も読み取れる。

また、Lunaを迎えた幽玄的な「Dear Treasure」、Amtracとの「Be Right With You」、Oxisを迎えた「Wishes」など、各曲に異なる質感が宿りつつも、全体としては一つの大きな情感の流れを描き出している。

「混沌を受け入れること」

ヘイズ・ブラッドレイは今作について、次のように語っている。

「予測できない感情、揺れ動く瞬間、カオス。それらを拒絶するのではなく、音へと変換することがこのアルバムの核心です。聴いてくれた人が、少しでも自分の力を取り戻すきっかけになればと思っています。」

その言葉どおり、『Audience』は内省のためのアンビエントでも、フロアだけを意識したクラブミュージックでもない。
心が揺れるままに、身体が動き始める。その狭間に落ちる、絶妙なニュアンスの音楽である。

トラックリスト

  1. Hero’s Ride Home
  2. Amsterdam
  3. Dear Treasure (ft. Luna)
  4. Total Call
  5. Awareness
  6. Eselsbruecke
  7. Satellite
  8. Play It As It Lays
  9. Wishes (ft. Oxis)
  10. & I Love U
  11. The Charms Wound Up
  12. Be Right With You (ft. Amtrac)
  13. Plasma
  14. Airwash

アーティスト情報

ヘイズ・ブラッドレイは、インディー映画やBurberry、Guessといったファッションブランドの音楽制作を手がけるほか、ベック作品へのリミックス提供や、ケイトラナダとの共演、AIRとのツアーなど活動は多岐にわたる。ライブでは、ドラム、ピアノ、シンセを行き来するダイナミックな表現で知られている。


『Audience』は配信中
https://orcd.co/hbaudiencelp

混沌を美しく響かせる音楽は、いつだってあなたの内部にある。

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