壊れたビートの奥にある“祈り”──TDJがキュレートする新作『SPF INFINI: KIMBERLAID』が描く、感情と速度の臨界点

TDJが放つ、トランスの新たな系譜

モントリオール発のトランス・ヴィジョナリー TDJ が、自身の新レーベル SPF INFINI から第2弾となるコンピレーション『SPF INFINI: KIMBERLAID』を発表した。今回キュレーションを担うのは、パリのDJ/プロデューサー KimberlaID(キンバーライド)。未発表音源のみで構成された全29曲のミックスと映像作品が同時公開された。
SPF INFINIシリーズは、TDJが提唱する“モダン・トランス”の精神──陶酔・解放・情動──をもとに、次世代のアーティストたちと共に音と映像で世界観を構築するプロジェクトである。

感情の臨界を駆け抜ける、KimberlaIDの音世界

KimberlaIDは、ジャンプスタイルやガバ、インダストリアル・ハードコアなどを自在に横断しながら、ハードでメロディックなサウンドを探求する気鋭のプロデューサー。
本作『SPF INFINI: KIMBERLAID』では、ハードコア特有のスピードと歪みの中に、繊細なメロディや内省的な情感を織り込み、“感情の限界点”を描き出している。ジャンルの壁を越え、トランス、ハードコア、バラードの要素が激しく衝突しながらも、ひとつの流れとして結晶するその構成は、KimberlaIDが持つ音楽的レンジの広さと感性の深さを示すものだ。

映像作品では、前回のエピソードでZorzaが登場した“レイヴァーたちの宇宙船”を舞台に、KimberlaIDがライブミックスを披露。新たなキャラクターたちが加わり、SPF INFINIシリーズの世界観がさらに拡張されている。

KimberlaID

TDJが託す、トランスの未来

TDJは本作についてこう語る。
「SPF INFINIは、ひとつのビジョンを共有する“家族”のような存在でありたい。オリジナルなトランスの精神を受け継ぎながらも、その枠を超えていく。歓喜に満ち、感情的で、そして至福に包まれた音楽を。かつて私が招いたアーティストたちが、今度は自ら光を放つ番なんだ」。
シリーズ第2章にして、SPF INFINIは“キュレーション”から“継承”の段階へと移行する。TDJが照らす光は、KimberlaIDという次世代アーティストに確実に受け継がれた。

ハードコアの鼓動とメロディの涙

トラックリストには、DJ Geneviève、Avril23、Water Spirit、Haus Of Panda など多彩なアーティストが参加。
硬質なキックと歪んだベースが突き上げる「Metal」や、幻想的なコードが包む「Un Monde Sans Toi」、そしてKimberlaID自身による「Change of Plans」では、彼女のサウンドが持つ“暴力と優しさの同居”が鮮やかに浮かび上がる。
全29曲、約90分──このミックスは、単なるDJセットではなく、感情を極限まで圧縮した“物語”である。

SPF INFINIが示す、新しい“陶酔”の形

『SPF INFINI: KIMBERLAID』は、現代レイヴ・カルチャーの進化形であり、テクノやトランスが持つ精神性をアップデートする試みである。TDJが描くのは、過去へのノスタルジーではなく、感情の未来図──そこでは速度とエモーション、破壊と祈りが共存する。

リリース情報


すべての感情が、光速で衝突する──これがSPF INFINIの新たな夜明けである。

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