崩壊と再生のあいだで──fknsyd & X1-Y2『Dissolution of Self』が描く、自己の輪郭が溶ける音世界

魂が揺らぐ、電子と声の共鳴

オルタナティブ・エレクトロニック・アーティスト fknsyd と、匿名の新鋭プロデューサー X1-Y2 が手を組んだコラボレーションEP『Dissolution of Self』が、HypnoVizionよりリリースされた。本作は全4曲から成り、タイトルが示す通り“自己の溶解”をテーマに、コントロールと降伏の狭間に生じる緊張をサウンドとして描き出している。

X1-Y2による鋭利なサウンドデザインと、fknsydの幽玄なヴォーカルが織りなす世界は、産業的ノイズの中にかすかな人間の温度を感じさせる。ノイジーでありながら崇高、混沌の中に静寂が息づく──そんな矛盾の共存こそが、このEPの真髄である。

感情が溶け出す、4つの断片

冒頭を飾る「Murmurs」は、歪んだ低音と有機的なリズムがせめぎ合う、内面のざわめきを具現化した楽曲。続く「Science and Reason」では、冷徹な構造美と感情の揺らぎが交錯し、知と衝動の間に潜む不安定な均衡を示す。
EPの核を成す「I Am Hopeless Devotion」では、生ギターの質感と精密なプロダクションが融合し、痛みと美が同居する瞬間を刻む。そして「When the Mirror Looks Back」では、自己と他者の境界が曖昧になるような、幽玄な余韻で物語が閉じられる。

二人の創造が生んだ“混沌の静けさ”

fknsydは「最初は一曲だけ作るつもりだった。でも1〜2日で完成してしまって、楽しさのあまり止められなかった」と語る。X1-Y2もまた「混沌と滑らかさ、攻撃性と優しさ──相反するものを両立させたかった」と振り返る。偶然から始まったセッションは、やがて二つの異なる感性が同じ“崩壊”を見つめるための儀式へと変わった。

進化を続けるHypnoVizionの象徴的邂逅

fknsydは、RezzやRL Grime、TDJ、Chet Porterらとの共演で注目を集めるマルチアーティストであり、HypnoVizionにおける重要な存在である。一方のX1-Y2は、Rezzとのコラボレーション「NOVUS EP」やソロ作『Caustics EP』で、匿名ながら圧倒的な存在感を示してきた。
その両者が出会い、音が“自己の輪郭”を壊していく瞬間を記録したのが、『Dissolution of Self』である。

『Dissolution of Self』トラックリスト

  1. Murmurs
  2. Science and Reason
  3. I Am Hopeless Devotion
  4. When the Mirror Looks Back

配信リンク: https://hypnovizion.lnk.tt/dissolutionofself
レーベル: HypnoVizion


「消えることは、終わりじゃない──“自己”の輪郭を手放したその先に、音だけが残る。」

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