
“人間らしさ”を問い続ける音のリワーク
韓国のアーティストHWIが、アルバム『humanly possible』の1周年を記念してリミックス・シングル『possibly human (REMIXES)』をリリースする。リミキサーとして参加するのは、ゲーム開発者/映像作家のMELTMIRROR、そして“Piano Shoegazer”の名でも知られるPishu。それぞれがHWIの異なる楽曲を再構築し、人間と仮想、記憶とノイズの狭間に漂う新たなサウンドスケープを描き出している。
MELTMIRROR──ピクセルの夢を駆け抜ける90年代的サウンド
MELTMIRRORは、HWI「너의 전생(Your My Past Lives)」のMVを手がけたクリエイター。今回は自身初となる公式音源リリースとして、アルバム収録曲「Eh Ah (Lesson 5)」を大胆にリミックスした。新タイトル「Eh・A・B・C・D・Ah」は、使用したKORG Wavestation仮想音源のベクターポジション・ノブA/B/C/Dに由来。90年代ゲーム音楽を想起させるシンセ・トーンとチップチューン的なリズムが融合し、まるでアバターがミッションをクリアしていくかのような映像的世界が広がる。デジタルの郷愁と現代の質感が交差する、極めてコンセプチュアルなリワークである。
Pishu──“너의 전생”をノイズの深淵へ沈める
一方、かつて“Piano Shoegazer”として活動していたPishuは、「너의 전생(Your My Past Lives)」をシュゲイザー/ブラックゲイズの領域へと導く。全編MIDIノートで構築された重層的なノイズの海に、HWIのヴォーカルが溶け込んでいくような構成だ。
Pishuは過去にHWIのデビュー作『Sisyphus Happy』(2023)のアートワークを手がけた際、「彼女はまるで“シュゲイザーを視覚化した”ようだ」と語っていた。本リミックスでは、その言葉を自らの手で音に変え、夢幻的でざらついた音像を現出させている。
可能性としての“人間”
『possibly human (REMIXES)』というタイトルが示すように、本作は“人間らしさ”の再定義をテーマにしている。感情とアルゴリズム、身体性とプログラムが交錯するHWIの音楽世界を、ふたりのリミキサーがそれぞれ異なる文法で拡張。原曲の詩的な核を保ちながらも、より抽象的で内省的な次元へと押し上げた。
収録曲
- Eh・A・B・C・D・Ah (MELTMIRROR Remix) – 2:50
- 너의 전생 (Pishu Remix) – 3:31
リリースは2025年10月24日(金)。HWIというアーティストが“デジタルと感情の接点”を追い求める旅の、その続編がここに刻まれる。
HWI『possibly human (REMIXES)』
リリース日:2025年10月24日
トラック参加:MELTMIRROR, Pishu
A&R:Jongbin Choi, Paola Laforgia