ゴダール最後のまなざしを追う ── 日本初開催の展覧会《感情、表徴、情念 ゴダールの『イメージの本』について》が7月新宿で開幕

映画史を塗り替えた巨匠、ジャン=リュック・ゴダール。その革新的な映像表現を体感できる日本初の展覧会《感情、表徴、情念 ゴダールの『イメージの本』について》が、2025年7月4日より新宿・歌舞伎町にある「王城ビル」にて開幕する。開催期間は8月31日まで。本展はカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(CCC)内のアート部門「CCCアートラボ」と、パラダイス商事株式会社の共同企画により実現されたもの。

ゴダールの遺産が、空間インスタレーションとして甦る

本展の主題は、ゴダールの最後の長編映画であり、2018年のカンヌ国際映画祭で「スペシャル・パルムドール」を受賞した『イメージの本』。映画に引用された無数の映像断片を再構成し、複数のスクリーンにランダムに投影することで、映画という時間芸術の構造を空間へと転換させている。来場者は、まるでゴダールの編集室の中に入り込んだかのような感覚で、彼の視線を追体験することになるだろう。

本展のキュレーションを手がけたのは、ゴダール晩年の片腕であり、『イメージの本』の共同制作者でもあるスイスの映画作家ファブリス・アラーニョ。彼は本展を「映画の時間軸から解放された編集の森」と呼び、観客自らが“時間のカーソル”となって空間を彷徨う体験を提示している。

映画の未来を語るアーカイブとしての展示

会場となる「王城ビル」は、新宿・歌舞伎町の60年の歴史を見守ってきた建築物であり、その特異なロケーションと時代の記憶が、本展にさらなる深みを与えている。映画とアートの新たな接点を提示する場として、都市と歴史、個人と記憶が交差する空間が選ばれたことにも注目したい。

ドイツ・ベルリンでの開催(2022)

クラウドファンディングも始動 ゴダールの“最後のノート”を手にする機会

4月24日より、展示開催に向けたクラウドファンディングが「GREEN FUNDING」にてスタートしている。支援者へのリターンには、『イメージの本』および、ゴダールが亡くなる前日に完成させた遺作『シナリオ』(2025年8月公開予定)に関する、2冊の制作ノートのレプリカブックが含まれている。

CCCアートラボの門司孝之実行委員長は、「映画文化の新たな鑑賞体験を提示する本展を通じて、若い世代にもゴダールの功績を伝えたい」と語る。これは単なる回顧展ではなく、映画というメディアを再考するインスタレーションであり、映画史へのオマージュであると同時に、未来への問いかけでもある。

遺作『シナリオ』も2025年8月に公開


展覧会と連動して、ジャン=リュック・ゴダールの実質的な遺作『シナリオ』が8月に劇場公開される予定である。本作は18分の短編コラージュ映像と、制作過程を語るドキュメンタリーの2部構成。晩年まで実験的な表現を追求し続けた巨匠の、最後のまなざしが刻まれている。

ゴダール最後の長編映画『イメージの本』と、遺作『シナリオ』の制作ノートのレプリカブック(見本)
目次

ジャン=リュック・ゴダール《感情、表徴、情念 ゴダールの『イメージの本』について》展


会期: 2025年7月4日(金)~8月31日(日)
会場: 王城ビル(東京都新宿区歌舞伎町1-13-2)
チケット: 一般 2,200円(税込) ※6月よりART PASSにて販売開始
企画: CCCアートラボ、パラダイス商事株式会社
公式サイト
クラウドファンディングページ
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「映像とは何か?」という問いを更新し続けたジャン=リュック・ゴダール。その“最後の編集室”とも言える本展は、映画がアートと響き合う瞬間を、観る者に深く突きつけてくる。目撃者として、この空間に立ち会うべきである。

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