
ベルリン・テクノの象徴として知られるポール・カークブレンナーが、待望のニューアルバム『THE ESSENCE』からのサード・シングル「DREAMING ON」をリリースした。
本作は、デペッシュ・モードが2001年に発表したクラシック「Dream On」へのオマージュであり、原曲のメランコリックな深みと、カークブレンナー特有のオーガニックな温度感が見事に融合している。
🎧 Paul Kalkbrenner – “DREAMING ON”
メランコリーとミニマリズムの邂逅
「DREAMING ON」は、静かに波打つようなグルーヴと、浮遊感のあるフックを軸にしたハイポノティックなテクノ・トラックだ。カークブレンナーは原曲を単に引用するのではなく、自身の音楽的言語へと再構築し、2000年代初頭のY2K的ムードを現代的な音響で再定義している。そこにはレトロな懐古ではなく、デペッシュ・モードへの敬意とともに、音楽史の文脈を未来へと接続しようとする姿勢が感じられる。
“本質”を求めた7年ぶりのアルバム『THE ESSENCE』
本作が収録されるニューアルバム『THE ESSENCE』は、前作から7年を経てこの秋リリースされる。カークブレンナーは本作について「これは“本質”をテーマにしたアルバムだ。これまでで最も誇りに思える作品であり、1曲たりとも“埋め草”がない」と語る。
制作は数年にわたり行われ、70年代的ラグジュアリーとミッドセンチュリー・モダンが融合したアパートメントで録音が進められたという。タングステンの灯り、ヴィンテージTV、木と石、そして毛皮が並ぶ空間の中で育まれた楽曲群は、彼のキャリアの総決算ともいえる“有機的な成熟”を感じさせる。
ベルリンから世界へ──カークブレンナーという存在
1977年生まれのカークブレンナーは、90年代初頭のレイヴ文化の波に育ち、DJではなく“ライブアーティスト”として早くから独自のスタンスを築いた。
映画『Berlin Calling』(2008)とその劇中曲「Sky & Sand」の成功により、クラブシーンの枠を超えた存在となった彼は、これまでに8枚のアルバムを発表し、アリーナツアーをソールドアウトさせ、Tomorrowlandをはじめとする大型フェスのヘッドライナーも務めている。
2014年にはベルリンの壁崩壊25周年記念式典にて、40万人を前にパフォーマンスを披露。カークブレンナーはもはやテクノの象徴に留まらず、音楽と都市文化の境界を超えてその存在を刻み続けている。
『THE ESSENCE』が映し出す“夢見る現実”
「DREAMING ON」は、デペッシュ・モードの遺伝子を受け継ぎながら、カークブレンナー自身の“音の記憶”と“現代のリアリティ”をつなぐ楽曲である。タイトルの通り、“夢見続けること”こそが彼の音楽の原動力であり、クラブカルチャーの持つ希望と孤独、そして美しさを静かに語りかける。ポール・カークブレンナーの音は、いま再び、ベルリンの地下から世界へと鳴り響いている。

「DREAMING ON」作品情報
Artist: Paul Kalkbrenner
Title: “DREAMING ON”
Label: B1 / Sony Music
Release Date: 2025年9月26日
Album: 『THE ESSENCE』(今秋発売予定)
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