ケニアの知られざるローカル・ヒーロー──ジョセフ・カマルのコンピ盤からリマスター音源が公開

〈Warp〉傘下の名門レーベル〈Disciples〉より、ケニア音楽界のレジェンド、ジョセフ・カマルの未発表音源を収めた編集盤『Heavy Combination』が10月31日にリリースされる。本作に先駆け、収録曲「Ikihanda Munyug」のリマスター音源が公開された。

キクユ音楽とビートの融合──踊れて沁みる“ケニアン・ソウル”

ジョセフ・カマルは、ケニアの中央部にルーツを持つ民族・キクユの音楽を現代的に進化させたシンガー/作曲家である。彼の音楽は、伝統的なリズムとチャントに、アフロ・ファンクやディスコ、そしてフォークのエッセンスを取り入れたハイブリッドなサウンドを特徴とする。
「Ikihanda Munyug」は、ダンサブルなビートに乗せて愛の機微を歌うラブソングでありながら、その奥には社会へのまなざしが潜む。カマルの歌詞はプロテストから恋愛指南まで幅広く、生々しく直接的でありながら、心を掴むフックに満ちている。

孫・KMRUによるアーカイブ発掘とリマスター

2018年に逝去したジョセフ・カマルの膨大な録音アーカイブを掘り起こしたのは、彼の孫でありベルリンを拠点に活動するサウンドアーティスト KMRU である。環境音楽やアンビエントの分野で注目を集めるKMRUが、祖父のテープ音源をデジタル化し、ベルリンの〈Dubplates & Mastering〉でリマスタリングを実施。
その結果、カマルが残した音楽の生命力が現代のリスナーへと蘇ることとなった。

アートワークとテキストにも息づく家族と記憶の物語

スリーブデザインは、カマル家のアーカイブ資料をもとにKarolina Kolodziejが担当。ブックレットには、ケニアの学者Maina wa Mutonya、音楽ジャーナリストMegan Iacobini de Fazio、そしてKMRU自身によるエッセイが収録される。
国内流通仕様盤CDには日本語訳ライナーノーツが封入され、ジョセフ・カマルの全貌を初めて知るリスナーにもアクセスしやすい構成となっている。

ケニア音楽の歴史を再発見する一枚

〈Disciples〉はこれまで、ボグダン・ラチンスキー、デニス・ボーヴェル、Phewといった多様なアーティストの作品を手がけ、時代や地域を超えて“カルト的遺産”を発掘してきたレーベルである。その最新の掘り出し物が、ジョセフ・カマルの『Heavy Combination』である。
ダンスフロアを揺らすグルーヴと、土地の記憶を宿した旋律。ジョセフ・カマルは、いま再び“ケニアのローカル・ヒーロー”から“ワールドミュージックの隠れた巨星”へと蘇ろうとしている。

『Heavy Combination』作品情報


Artist: Joseph Kamaru
Title: Heavy Combination
Label: Disciples
Release Date: 2025年10月31日
Format: 国内流通仕様盤CD(解説書付き)/輸入盤CD/輸入盤LP(ブラック・ヴァイナル)
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