SHOGUNで世界を驚かせた作曲家・石田多朗が挑む「雅楽の未来」

2024年、真田広之主演で全世界を席巻したテレビドラマ『SHOGUN 将軍』。その音楽面において国際的な評価を集めたのが、日本人作曲家・石田多朗である。彼が劇中で手がけたのは、1300年以上の歴史を持つ日本伝統音楽「雅楽」をベースとしたオリジナルサウンドであった。

雅楽とは、本来は宮中儀礼などで奏でられてきた格式高い音楽であり、その精神性とスケールは世界でも類例がない。しかしながら現代において、その音楽が再定義される機会は少なく、一般の生活や商業空間に取り入れられることは稀であった。

石田はこの伝統に新たな命を吹き込み、SHOGUNの世界観に溶け込む形で雅楽を再構築。その静けさと奥行きのある音は、ハリウッドの大作の中でも一際異彩を放ち、結果として、世界中の視聴者に「これが本物の日本音楽である」と強く印象づけることとなった。

雅楽を“体験”として世界へ ── Drifterによる新事業の始動

この成功を受け、2025年春、石田が所属する株式会社Drifterは、雅楽を中核に据えた新たな音楽・空間演出事業を本格始動する。単なるBGMではなく、映像・ゲーム・舞台芸術・アートインスタレーション、さらには文化交流・教育コンテンツへと、雅楽を横断的に展開していく構えである。

特に注目すべきは、雅楽を「空間に生きる音楽」として再定義する点。ラグジュアリーホテルのスイートルームやスパ空間、さらにはミュージアムなどの静謐な場に導入されることで、空間体験そのものの価値を引き上げる試みが始まっている。

その導入形態も多彩で、季節ごとのカスタム音源の提供、宿泊者限定の雅楽コンサート、文化トークイベントの開催など、「音によるもてなし」としての可能性が広がっている。

実際に、東京都庭園美術館では、雅楽による環境音演出が高く評価されており、今後も文化施設や高級宿泊施設との連携が期待されている。

東京都庭園美術館『ブラジル先住民族の椅子展』

雅楽の“再構築”を可能にする、唯一無二の作曲家

そもそも、現代においてゼロから雅楽を作曲できる作家は、国内においても20名に満たないとされている。そのなかで、石田多朗は東京藝術大学での修学を経て、クラシックから現代音楽、電子音楽までを横断する知見を背景に、雅楽の新たな地平を切り拓いてきた。

石田多朗・陵王乱序コンサート

SHOGUNでは、アカデミー賞受賞作曲家アッティカス・ロスらと共同制作。西洋の音楽構造に、石田が提供する雅楽の旋律が融合することで、全く新しいサウンドスケープが生まれた。これにより、雅楽が国際的な映像作品においても通用する表現であることが世界に示されたのである。

また、石田の雅楽は、ただ“伝統的”であるにとどまらない。余白や余韻を大切にしたその音は、現代の富裕層が求める「静けさ」や「美意識」に通底し、宿泊体験や文化空間において強い付加価値を生む。

音楽と空間演出の先へ ── 雅楽がビジネスになる時代へ

現在、石田とDrifterは、雅楽とクラシックを融合したアルバムのリリースや、ヨーロッパでのコンサートツアーなど、国際展開も見据えたプロジェクトを進行中である。

雅楽という日本文化の粋を、一過性のトレンドで終わらせるのではなく、「文化資源」として再構築し、持続可能なビジネスモデルとして昇華させようとするこの試みは、音楽業界のみならず、観光・アート・ホスピタリティなど多領域にわたる広がりを見せている。

その背景には、「なぜ日本で雅楽が商業化されなかったのか?」という問いがある。伝統ゆえの特殊性、敷居の高さ。しかし、いま求められているのは、その伝統を現代の感性でアップデートし、新たな“聴き手”と“体験”へとつなぐことである。

石田多朗が描く「雅楽の未来」。それは、日本が世界に誇るべき文化の、新たなグローバルモデルとなるかもしれない。

Drifter 公式サイト

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