メガデス、終焉の序曲──最後のアルバム『MEGADETH』からリードシングル「Tipping Point」を公開

2025年10月7日

メガデス、ラストアルバム始動――「Tipping Point」で描く崩壊と再生

ヘヴィメタル界の巨星、メガデス（MEGADETH）がラストアルバム『MEGADETH』からのリードシングル「Tipping Point」と同曲のミュージックビデオを公開。アルバムは2026年、デイヴ・ムステインのレーベルTradecraftと、フロンティアーズ・レーベル・グループの新レーベルBLKIIBLKとの提携によってリリースされる。

「Tipping Point」は、冒頭のギターソロが炸裂と同時に空気を切り裂き、ムステインの歪んだ咆哮が闇を貫く。異様な緊張感の中で展開されるリリックは、社会的崩壊と個人の再生を行き来し、メガデスの核である“破滅の中の理性”を突きつける。MVはレオナルド・リベルティが監督を務め、監獄に囚われ拷問を受けるムステインと、同じ空間で演奏するバンドメンバーの姿を交錯させながら、破壊と救済の物語を描く。終盤でムステインが悪に打ち勝ち、光の中を歩き出すシーンが象徴的だ。

「誰にでも“Tipping Point（転機）”はある。日によって変わることもあるだろう。いま俺たちは限界まで追い詰められている。だが、屈するな」
デイヴ・ムステインはこの楽曲についてそう語る。

グラミー受賞バンド、メガデスの最終章へ

メガデスはデイヴ・ムステイン（Vo/Gt）、テーム・マントゥサーリ（Gt）、ジェイムズ・ロメンゾ（Ba）、ダーク・ヴェルビューレン（Dr）で構成。2026年にバンドとして最後となるニューアルバム『MEGADETH』をリリースする予定だ。ムステインは今年初め、公式ファンクラブCyber Armyを通じて世界中のファンに“これはメガデス最後のスタジオアルバムになる”と直接宣言している。

メガデスはこれまでに全世界で5,000万枚以上のレコードを売り上げ、グラミー賞を受賞（ノミネート12回）。彼らの音楽史における存在感は、メタルというジャンルの枠を超えて文化そのものを形成してきた。ムステインはアルバムとツアーの予定を、バンドのマスコット「ヴィック・ラトルヘッド」名義で発表しており、来年には自身の新たな回顧録も刊行予定。詳細は今後数か月以内に明らかにされる見込みだ。

50年の歴史が築いたメタルの系譜

メガデスは1983年の結成以来、常にメタルの進化を牽引してきた存在だ。ムステインが創設し、作曲・演奏・プロデュースを担ってきたこのバンドの存在なくして、現代ヘヴィミュージックの系譜を語ることはできない。プラチナ認定の『Peace Sells…But Who’s Buying?』（1986年）、『Rust In Peace』（1990年）、ダブルプラチナの『Countdown To Extinction』（1992年）はいずれも時代を代表する作品として位置づけられており、『Dystopia』（2016年）ではタイトル曲がグラミー賞「最優秀メタル・パフォーマンス賞」を受賞。2022年の『The Sick, The Dying…And The Dead!』も再び全米トップ3入りを果たし、シングル「We’ll Be Back」で同部門に再ノミネートされた。

メガデスの影響は音楽業界の外にも波及している。ポスト・マローンが3rdアルバム『So Far, So Good…So What!』のタイトルをタトゥーに刻み、アニメ『ザ・シンプソンズ』ではホーマー・シンプソンのiPodにバンド名が表示され、ドラマ『ビリオンズ』や映画『ビルとテッドの地獄旅行』などにも登場する。

彼らは50年にわたり、スラッシュメタル復興の先陣を切り、MTV全盛期を駆け抜け、ストリーミング時代にもその存在を更新し続けてきた。パンデミック以降も世界の混沌を音として昇華させ、破壊の中に希望を見出す姿勢を崩していない。

メタルの枠を超える多角的活動

さらにメガデスは音楽外の分野でも活動を拡大。2016年にシグネチャービール「À Tout Le Monde」を、2019年には「Saison 13」を発売し、累計1,500パイントを超える販売を記録。2025年にはKeystoneとの提携により、地球規模のプラットフォーム展開を予定している。ムステインはまた、自身のワインブランドHOUSE OF MUSTAINEを立ち上げ、音楽とワイン文化の融合を体現。“2013 Symphony Interrupted Cabernet Sauvignon”でブランドデビューを果たした。