ケニア音楽界の知られざる巨人、ジョセフ・カマル ── 〈Disciples〉より編集盤が登場

〈Warp〉傘下の名門レーベル〈Disciples〉から、ケニアのローカル・ヒーローにして音楽界の伝説、ジョセフ・カマルの編集盤『Heavy Combination 1966 – 2007』が10月31日にリリースされることが発表された。現在、YouTubeにてトレイラー映像が公開されている。

収録曲は全17曲。ハイライフ風のギターを用いたダンスチューンから、アフロ・ファンク、ドラムマシンとシンセを駆使したディスコ・グルーヴ、さらにはフォーク調の叙情的な楽曲まで幅広く揃う。カマルの音楽は、踊れる強靭さと同時に鋭い社会性を帯び、政治批評から恋愛指南までを歌い上げる。近年注目を集めるオリエンタル・ファンクの源流をも感じさせる鮮烈な作品群である。

このリイシューは、2018年に逝去したカマルのアーカイブを孫でありベルリンを拠点とするアーティストKMRUが掘り起こしたことから始まった。彼が数十本のカセットをデジタル化し、Bandcampに公開したプロジェクトが〈Disciples〉の目に留まり、共同作業を経て今回のコンピレーションが完成した。収録音源はKMRUによるテープ転送を基に、ベルリンのDubplates & Masteringにて丁寧にリマスタリングされている。スリーブはカマル家の資料を用い、Karolina Kolodziejがデザインを担当。ライナーノーツにはケニアの学者Maina wa Mutonya、音楽ジャーナリストMegan Iacobini de Fazio、そしてKMRU自身の寄稿が収められる。国内盤CDには日本語訳ライナーが封入される。

ジョセフ・カマルとは何者か

ジョセフ・カマル(1939–2018)は、ケニアにおいて絶大な人気を誇った音楽家である。1967年の初ヒット「Celina」「Thina wa Kamaru」で脚光を浴び、以降ベンガやゴスペルを中心に約2,000曲を発表。推定50万枚のレコードを売り上げ、国民的アイコンとして政治や社会問題にも深く切り込んだ。

そのキャリアは波乱に満ちており、大統領ジョモ・ケニヤッタとの蜜月から、権力を批判したことでの対立、多党制支持による失脚まで、音楽と政治を行き来した存在であった。1970〜80年代にはVoice of Kenyaのラジオを通じて広く紹介され、「ケニアのジム・リーヴス」と称された。晩年はゴスペルへ転向しつつも、その音楽的遺産は今なお東アフリカのシーンに強い影響を残している。

リリース情報

Joseph Kamaru 『Heavy Combination 1966 – 2007』
Label: Disciples
Release: 2025年10月31日

  • 国内盤CD(解説書・日本語訳付き)
  • 輸入盤CD
  • 輸入盤LP(ブラック・ヴァイナル)

詳細: BEATINK商品ページ

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