[音楽と〇〇]ジョジョと音楽に魂を賭けろ ── DJシーザーが語る奇妙で熱狂的なクロニクル

VETHELの特集企画「音楽と〇〇」は、音楽と寄り添うさまざまなサブカルチャーとの交わりを探るインタビューシリーズ。〇〇はアートやゲーム、漫画、映画、ガジェット、建築、グルメ、旅行、乗り物、スポーツ、アウトドア……など何でもあり。音楽とその界隈の関係を語っていただきます。今回のゲストは?

アニソンDJ界のレジェンド・DJシーザーさん。彼の背後には常に「ジョジョの奇妙な冒険」があった ── 少年時代に『少年ジャンプ』で第1話を目撃して以来、衝撃は血肉となり、やがて音楽活動にも深く染み込んでいく。洋楽スタンド名の元ネタを小学生で見抜き、家に流れるザ・ローリング・ストーンズをBGMに育った環境は、自然と“音楽的ジョジョ脳”を形成していった。DJキャリアのスタートも必然の流れのように始まり、やがてコスプレを纏い世界中のステージで「ジョジョ愛」を炸裂させることに。東京ドームでの伝説のオフ会や、ヨーロッパでの熱狂的なステージ……その歩みはまさに奇妙で必然な冒険譚だ。本インタビューでは、音楽とジョジョがDJシーザーさんの人生をいかに重ね合わせ、今も燃え続けているのかを語ってもらった。

DJシーザー:2007年に活動を開始し、アニソンをショートMIXする独自スタイルを確立した日本を代表するアニソンDJ。2018年にプロデュースした
「週刊少年ジャンプ50th Anniversary BEST ANIME MIX」三部作や、2019年の「機動戦士ガンダム 40th Anniversary BEST ANIME MIX」をヒットさせ、
後者はオリコンアニメウィークリー初登場1位を記録。国内外の大型イベントに多数出演し、アキバ系DJイベントの隆盛にも大きく貢献。
現在もシーンのパイオニアとして文化を牽引し、声優やアーティストへのDJ指導も行っている。
目次

食卓に現れた衝撃──『ジョジョ』との出会い

VETHEL そもそも『ジョジョの奇妙な冒険』と出会ったのは、いつ頃なんでしょうか?

DJシーザー はっきり覚えてますね。『ジョジョの奇妙な冒険』の連載開始が1987年なんですよ。その頃から……うち漫画一家でして。実家が、『少年ジャンプ』と『少年マガジン』と『少年サンデー』を毎週購読してたんです(笑)。めちゃくちゃ珍しいでしょ?

VETHEL 夢のような家庭環境ですね(笑)。

DJシーザー そう、だから近所の友達も「シーザーんち行けば漫画読めるから」って感じで、自然と溜まり場になってました。で、『ジョジョ』も第一話から読んで、いきなり度肝を抜かれましたよ。小学校低学年のガキがあの1話目を読んだら“なんじゃこりゃ!?”って衝撃受けますよね(笑)。食卓でジャンプを読みながら、ご飯を吹き出すくらいのインパクトでしたもん。兄貴に「変な漫画始まったよ!」って言ったのを覚えてます。

シンガポールでのDJの様子

VETHEL 『ジョジョ』を読んでいた頃は、どんな音楽を聴いていたんですか?

DJシーザー これも本当、嘘みたいな話なんですけど、音楽も大好きな一家だったんですよ。親父が勤め人やりながら ── 料理人で、若い頃はスタジオミュージシャン的なこともやってたんです。ベースやキーボードをジャズクラブやライブハウスで披露したり。そのせいで、買ったり、頂いたりしたレコードやテープも山ほど家にあったわけなんです。掃除機をかけるときのBGMがローリング・ストーンズやビートルズなんですから。足立区の片隅でストーンズ流しながら掃除する親って(笑)。なので、子どもの頃から音楽に自然と浸かってましたね。

VETHEL では、ご自身も自然と楽器演奏を?

DJシーザー はい、もともとバンドマンです。それが転じてDJになったんですよ。

VETHEL DJになったきっかけは?

DJシーザー よく話すエピソードなんですけどね。自分のバンドではブルーハーツやRCサクセション、クラッシュのコピーとかやってたんです。だから、洋楽も大量にCDやレコードを持ってたわけ。で、2006年頃かな、西川口で友達がDJバーを始めてたんですよ。でも「DJの知り合いが少ない」って言うから(笑)、「お前、音楽いっぱい持ってるしできるでしょ?」って頼まれて。ギャラも出るし、じゃあやるかって始めたんです。最初から膨大に音源を持ってたからリクエストにも対応できたし、ディスコDJ的な立ち回りが自然とできた。そこから輪が広がって、渋谷や新宿のクラブに呼ばれるようになりました。

コスプレDJが巻き起こした“世界規模のジョジョ熱”

VETHEL では、『ジョジョ』の世界観を音楽で表現するとしたら?

DJシーザー えっと、育った環境の話とまさにここで繋がるですけど。僕ね、『ジョジョ』のキャラ名やスタンド名の元ネタ、最初から全部分かって読んでたんですよ(笑)。ローリング・ストーンズとかグリーン・デイとか。そもそも「ジョジョ」という名前自体がビートルズの曲「Get Back」に出てくる“Jojo”ですから。だから自然と洋楽とリンクしちゃう。小学生の時からそうで、妄想というより、もう頭の中で自動的に音楽が鳴ってる感覚ですね。

VETHEL では、アニソンDJのキャリアの中で、ジョジョ愛がにじみ出た瞬間は?

DJシーザー めっちゃあります。まずコスプレですね。弊社アブストリームクリエイションはREAL AKIBA BOYZ(レペゼン秋葉原のヲタクダンサーチーム)のメンバー「けいたん」が立ち上げた会社で、今は自分が代表なんですが、設立当初は自分もマネージャー兼DJとして動く時もあり、コロナ前などはほとんど毎月のように海外へ行っていました。特にフランスには何回か行っていて、そこでも承太郎(ジョジョ三部の主人公)のコスプレをしていましたね。海外では日本の漫画やアニメのコスプレ人気がとても高くて、特にフランスには驚くほど多くのジョジョファン(ジョジョラー)がいるんですよ。それから、ご存知だと思いますがルミカというペンライトの会社と提携して「ルミカステージ」というものが海外のアニメフェスでよく作られていました。そのステージ運営を弊社が担当していて、そこで「コスプレDJタイム」としてDJシーザー名義で1時間ステージに立つこともありました。ジョジョのコスプレをしてステージ出るだけで、「うわっ!承太郎だ!」と大歓声が起き、冗談抜きで千人くらいが集まることもあったんです。無料のステージでしたが、すごい盛り上がりでした。

VETHEL イベントのときはDJとしてステージに上がられる?

DJシーザー アニソンDJとして1時間くらいのステージを1日に3回ほど担当することもあります。ヨーロッパでは特にヒーローもののアニメが人気で、『NARUTO』や『DRAGON BALL』といった作品の楽曲もよく流します。また、ステージの最後の15分間は『ジョジョの奇妙な冒険』の楽曲だけで構成して大いに盛り上げることもあります。その際には、使用する楽曲の元ネタや背景を紹介しつつ進行することもありました。特に2012年から始まったアニメ版の楽曲は盛り上がりが大きく、会場全体が熱気に包まれるほどでしたね。

VETHEL 東京ドームでもやられてましたよね?

DJシーザー そうそう。知人がmixiの大きいジョジョコミュニティの管理人でして、500人集めて、東京ドームのグラウンドでオフ会やって機材持ち込んでDJしましたね。ジョジョ立ちレベル1から10まで再現したり。他には新宿のクラブで格ゲートーナメントを開催したり……偶然決勝がDIO対承太郎になって超盛り上がりました(笑)。足立区の東京武道館を借りてジョジョリンピックという運動会をやったこともありますよ。そこでもDJしました。三段跳びをジョジョ立ちでやったり、「スタンドが喋る回」が入ってる単行本などジョジョテーマの借り物競争したりとか。完全に異様な空間でした(笑)。

「俺の庭」から渋谷へ──シーンを横断する冒険

VETHEL 一方で、「俺の庭」シリーズを始めたきっかけは?

DJシーザー もともとアニソンクラブイベント(通称アニクラ)には関わっていたのですが、自分で主催を始めたのは2013年ごろで、そのときは「アニLOVE」というタイトルで開催していました。大きな箱でもやっていたのですが、RABと始めた会社が忙しくなり、2020年くらいに一度休止することにしました。その後、コロナ後の2023年に再始動を考え、「アニLOVE」ではなく新しい形にしようと思ったんです。当時は「アニクラ」という言葉自体が一般的になっていたので、あえてタイトルを変えました。オタクはよく「ここは俺の庭だ」と言うので、それを逆手にとってイベント名に「庭」を入れることにしました。横文字のカッコいいイベント名が多い中で、あえて日本語で、しかも地名を前につけて「◯◯は俺の庭」という形式にしたんです。実際、秋葉原や池袋などで開催してきて、現在は新橋のグランハマーで「新橋は俺の庭」をやっています。お客さんの層も土地土地で違っていて、例えば新橋だとオフィス街なので、オフィスカジュアルな女性や、ネクタイを締めたサラリーマンの参加してくれるんですよ。一方で秋葉原では、いわゆる「秋葉っぽい」人たちや常連さんに加えて、コンカフェで働いている子たちも仕事帰りによく来ますね。

VETHEL 今回、渋谷XXIでやることになりました。どんな客層を考えてますか?

DJシーザー センター街ですから、他のクラブから流れてくるギャルや外国人観光客を狙いたい。ガラス張りだから「何やってんの?」って覗きやすいでしょ。そこでオタクイベントが全開に盛り上がってるのを見せたいんです。渋谷ゆかりのコンテンツも入れますしね。

VETHEL 最後に、今後「俺の庭」と『ジョジョ』を融合させた企画は?

DJシーザー やりたいですね。現在、「コステラ」っていう姉妹イベントを仲間がやっています。始めたばかりでまだまだコスプレ参加者が増えると思うので、もし新たに取り組むなら、次にジョジョ7部の新アニメが始まるタイミングを狙いたいですね。そのときに「第7部のコスプレをしたら特典チケットをプレゼント」といった企画を用意して、イベントを盛り上げたいです。すでに第6部までアニメ化されて曲もたくさんあるので、例えば自分がDJやるなら全部ジョジョ関連の楽曲をかけて、ファンに思いきり楽しんでもらえたらと思っています。

VETHEL アニメが始まる時期は確実に盛り上がりますからね。渋谷での俺庭もとても楽しみです。

DJシーザー 渋谷で深夜……もちろん盛り上がりすぎて治安面で不安な部分もありますが(笑)、イベント自体は必ず盛り上がるはずです。今後も狙って仕掛けていきたいと思っています。

VETHEL 本日はありがとうございました!

9月12日(金)開催「センター街は俺の庭」@渋谷XXI

Interview & Text : VETHEL
Photo Provided:DJシーザー

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